数千年の人類の歴史という時間の隔たりがあり、現在とは異なる食生活にもかかわらず、歯周病の原因である同じ細菌が古代人の口の中にもいました。
人類と歯周病との付き合いは大変古く、旧石器時代の早期ネアンデルタール人の顎の骨にも認められます。
歯周病の原因菌は、約1万年以上も特に変化することなく、人類の歴史とともに親から子へ、あるいはパートナーへと脈々と受け継がれてきたといえます。いわゆる感染症の一つといえます。
紀元前の書物にも記載
近年増えた病気というわけでなく、紀元前の中国の医学書にすでに歯周病についての記載があり、また紀元前3000年のころの古代エジプト人にも歯周病があったことがわかっています。
いろいろな古代人の歯周病の状態を比較すると、身分の高い人ほど病状がひどいことから、食べ物に恵まれ美食をしていた人ほど歯周病にかかっていたと考えられます。甘いものや柔らかい食べ物、脂質の多い食べ物など贅沢な食生活が歯周病につながったと推測されています。つまり歯周病は食習慣に影響されていたのです。
その後医学の父と言われたヒポクラテスが歯周病の原因や症状について記載しています。
そして17世紀にはレーウェンフックがプラークの中に微生物を発見しています。
しかし微生物の感染と病気の発症との関係が突き止められて歯周病の予防方法と治療が体系化されてきたのは意外にも1960年代以降です。
そして近年日本の歯科医療でも歯周病は最も重要な歯科疾患として治療・予防に力を入れている分野となっていています。
歯周病は自然に治りません
このように昔から歯を失う原因として最も大きな要因であった歯周病は、自然に治癒しない病気です。
歯周病の直接の原因はプラークです。では歯磨きだけで歯周病が治るのかというと、歯石の除去や歯周病を起こしやすい環境を整え修復してあげない限り歯周病は治りません。
歯周病の治療方法
大切なのはセルフケアとプロフェッショナルケア
歯周病の原因は、歯に付着した細菌の塊である『プラーク』であり、プラークを取り除かなければ、歯周病の進行を食い止めることは出来ません。そこで、治療では、大元の原因であるプラークや歯石を取り除く『歯周基本治療』に主眼をおきます。これは、患者さん自身がおこなう『セルフ・ケア(ブラッシング)』と、歯科医院でおこなう専門的な『プロフェッショナル・ケア』がセットになっています。
ただし、歯周病を悪化させる原因はプラークだけでなく、喫煙や糖尿病などいろいろあります。プロフェッショナル・ケアを中心に、歯周病の原因を一つひとつ取り除く治療全体が、『歯周基本治療』です。
歯周基本治療は、患者さん自身が軽度の歯肉炎の段階でも、中等度以上、あるいは重症に進行している人にも共通する治療です。歯肉炎や軽い歯周病なら汚れ(プラーク、歯石)を取り除くプロフェッショナル・ケアを主体とした『歯周基本治療』だけで治ることもあります。
一方、歯肉の奥に溜まった汚れが歯周基本治療だけでは、取り除けない場合は、『歯周外科治療』を行います。治療後の再検査で改善が確認できたら、メインテナンス(定期的に清掃と検査)、治ってなければ再度治療というように、治るまで治療と検査が繰り返されます。
歯周病はその進行の程度により、いくつかの治療が適応されます。
1.基本治療
歯周病の進行の程度にかかわらず、初めに行われるべき治療が歯周基本治療です。原因であるプラークの除去および歯石の除去、歯の根の面の滑択化、ぐらぐらする歯の咬み合わせの調整などです。
プラークの除去をプラークコントロールといい、そのほとんどはご自宅でのセルフチェックとなります。 場合によっては、歯科医院で器械的に行うこともあります。
スケーリングは歯の表面や根の表面の歯垢歯石を器械で取除く事です。ルートプレーニングは歯の表面がざらざらしたり、歯石で満たされていたり、毒素や微生物で汚染された表層を除去する方法で、多くの場合スケーリングと同時に行われます。
また、歯周病の進行に伴い歯は動いてきますが、動いている歯で噛むとさらに負担が増すため、その負担を軽くするために歯を削るなどして咬み合わせの調整を行います。それでもぐらぐらして噛みづらい場合は歯科用の接着剤で隣の歯と接着し、ぐらぐらを抑えていきます。
これら基本治療により歯周組織が改善され、ポケットの深さが浅く(2~3mm)維持されればメインテナンス(定期検診)に移行します。
2.外科治療
基本治療で一部ポケットの深さが改善されず、ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングで除去できない状態や、歯周病の進行が進んでしまった状態に対して外科的にポケットの深さを減少させる手術があります。
また、特殊な材料を用いて部分的に失われた骨を再生させる手術(再生療法)を行う場合もあります。手術はそれぞれの病態にあった方法が適応されます。
ポケットが改善されれば、メインテナンスに移行します。
ブラッシング
ブラシの毛先があたっていなければ、プラークはとれません。
自分では磨いているつもりなのに磨けていない人のほとんどが、磨きたい所に毛先を当てられていないことがあります。
【磨き方のPoint】
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毛先を磨くPointに確実にあてましょう。最初は、鏡を見ながら毛先がとどいていることを確認するのも良いでしょう。
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動かし方は?
小さく横にでも、縦にかき出す様にしても、円を描く様にしても、良いと思います。要は、歯と歯肉を傷つけることなくプラークを落とすことができれば良いのです。 -
軽く磨く様にしましょう。
力を入れて磨くと歯ブラシの毛先が開いてしまいプラーク(歯垢)が落とせません。さらには、歯や歯肉を痛めてしまいます。力の目安は、毛束がまっすぐなまま歯面に当たる程度です。 -
細かく動かしましょう。
毛先を使って磨く方法がプラークの除去には効果的です。ついつい大きく動かしがちですが、歯には凸凹があるため小刻みに動かさないと、引っ込んだ所には毛先がとどきません。特に、裏側や歯と歯の間を磨く時は、大きく動かすとせっかく入った毛先がでてしまいますので注意して下さい。 -
1ヶ所につき10回~20回ぐらい磨きましょう。
プラークは粘着性が高いため、2回~2回歯ブラシを動かした程度では落としきれません。1日に最低1度は、時間(5分以上)をかけてゆっくりと隅々のプラークを取り除いて下さい。
可能であれば、毎食後磨くことが理想です。
とくに、寝る前に丁寧にゆっくりと磨くことが効果的です。