2023.07.07 診療コラム

他院で今何が起こっているのか?

根の治療が全ての治療を左右します。

どういう事でしょうか?

まずはこちらをご覧ください。

左上の奥歯のレントゲンCT写真です。

元々、中間部の歯が抜去されており、両隣の歯を固定元にして修復を行うブリッジという被せ物の治療を行なっていました。

入れていたブリッジは通常の保険のものではなく、セラミックの非常に高価な素材による治療でした。

しかしながら、数年ほどで虫歯が再発し、被せ物が外れてしまっている状態です。

なぜでしょうか?

答えは簡単です。

本来行うべき治療が完結されていなかったからです。

向かって左側の画像には歯の内部が白くなっているのがわかります。

これは根の治療が終わり、防腐剤が入っていることを表しています。(残念ながら膿が溜まってしまっています)

しかし右側の方はどうでしょうか?根の内部へはレントゲンには映ってこない薬が入っており、根の治療は途中になってしまっていました。

その結果、根の先端には膿が溜まり、歯の内部が細菌の影響で溶けてしまっています。

こうなることは、歯科医師ならある程度予測できる事です。

また、治療の予後が不安な場合は仮歯などを入れて経過観察にする場合もありますが、この場所には最終的なとても高価な被せ物が入っていました。

私なら怖くて入れられません。

どんなに良い土台や被せ物を入れようと、根の治療がダメだと全てがダメになってしまうからです。

そして根の再治療となると治療の成功率は低くなり、加えて元々入っていた土台などが太い場合は抜歯になるケースも多々あります。

これは歯の根の断面図です。

専門的な話を盛り込むと、一番奥の歯には3つの根と4つの根管と言われる神経の入る細い道が空いているのがCT上では確認できました。

通常であれば3根3根管ですが多い人も入れば少ない人もいます。

しかし、空いていたのは比較的見つけやすい口蓋根と言われる大きな根管1根のみ。

そこにVitapexという強アルカリ性の水酸化カルシウム、ヨードなどを配合したやや硬い練り物のようなが充填されて治療が終了となっていました。

 

治療方針の決定

状態は悪いにしろ、すぐに歯を抜きましょうとはなりません。

今回はVitapexを太い器具で取り除き、残っている全ての根管を#6穿通用リーマーという、先端径が0.06mm器具を用い、治療回数2回で全ての根管を空けきりました。

正直細い器具を地道に進めて空けるのは骨が折れるくらい大変ですが、これができないとその歯の治療は成功しません。(まれに狭窄根で根の先端が感染していない場合もあります)

日本には歯科医院がたくさんありますが、考え方や治療方針などは全員異なります。

しかし、症状が無いからと治療の予後を端折ってしまったり、基本の治療ができる前に先に進んでしまうと思わぬ落とし穴が待っていたりします。

今後も、他院で何が起こっているのか?実際の歯科の現場なんかもお伝えしていこうと思います。

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