2023.11.21 診療コラム

ヘミセクション・トライセクションとは?

皆様こんにちは。
本日はヘミセクション・トライセクションと呼ばれる歯根分割抜去法についてご説明いたします。
歯根分割抜去法とは、複数の歯根がある歯に対して行う術式で、問題のある歯根だけを分割して抜去し、問題のない歯根を保存する方法です。
この方法は大臼歯という奥歯に対して使われる方法です。大臼歯には、歯の根っこが複数あります。
このため、条件が揃えば問題のある歯根だけを抜歯し、健康な歯根を保存して利用することが出来ます。

ヘミセクション・トライセクションの適応症状と対象患者

歯根が2本の歯にに対して行う歯根分割抜去法のことを、ヘミセクションと言います。
下顎の大臼歯はほとんどの場合歯根が2本のため、下の奥歯の歯根を分割する場合は多くの場合ヘミセクションとなります。

一方で、歯根が3本ある歯に対して行う歯根分割抜去法ことを、トライセクションと言います。
上顎の大臼歯は多くの場合歯根が3本あり、歯根を分割する場合はトライセクションを行うこととなります。

適応症状には以下のようなものがあります。
-重度の歯周病による歯根周りの骨喪失
-歯根の感染、外傷や破折
-隣接する歯の治療が困難な場合

対象となる患者様は、以下の条件を満たす方です。
-歯周病や歯根感染が部分的で、他の歯根や周囲の歯が健康な状態であること
-歯の抜歯が避けられないが、ブリッジやインプラントが適用できない方
-歯の保存を重視する方
これらの条件を満たす場合、歯根分割抜去法が適用される可能性があります。

歯根分割抜去法のメリットとデメリット

歯根分割抜歯は、破損や感染がある歯根を分割して抜去する方法です。そのメリットとデメリットを以下に示します。

メリット:
-歯の保存が可能で、機能と審美性を維持できる
-隣接する歯への影響が少ない
-抜歯後の骨の喪失が抑制される

デメリット:
-手術時間が長く、術後の痛みや腫れがある
-感染や破折のリスクが残る可能性がある

CT撮影による精密検査と診断プロセス

精密検査と診断プロセスにおいて、CT撮影は重要なツールです。これにより、以下の情報を得ることができます。

-歯と周囲の組織の詳細な構造
-歯根の感染や炎症の程度
-骨の量や密度
-歯科治療の適応や予後の判断

CT撮影の結果をもとに、治療計画を立案し、適切な治療方法を選択します。また、診断プロセスは以下のように進められます。

1.患者の症状や歯の状態を確認
2.CT撮影による精密検査
3.検査結果をもとに治療方針を決定
4.治療計画の説明と同意書の取得
5.治療の実施

患者の安全と治療効果を最大限に引き出すために、CT撮影を活用した精密検査と診断プロセスが重要です。

歯根分割抜去法の具体的な手順とポイント

手順は以下の通りです。

– 根管治療:分割が必要な歯は神経を事前に取っておく必要があります
– 歯の分割:歯を股の部分で分割します
– 歯根の抜去:ダメになってしまった方の歯根を器具で掴んで抜去します
– 歯根の形態を整える:分割面を滑らかに整えます
– 歯肉の治癒を待つ:抜去した部分が治癒して歯肉に覆われるまで待ちます
– 補綴処置:歯肉の治癒後、被せ物を作っていきます

手術後の歯冠修復と感染予防

歯根分割抜去法後の歯冠修復は、歯の機能回復や見た目の改善に重要です。歯冠修復には、セラミックなどの材料を使用して、歯の形や機能を再現します。これにより、噛み合わせの安定や隣接歯への負担軽減が図られます。

感染予防には、手術後の清潔な口腔環境の維持が重要です。術後の経過観察やクリーニングを行い、適切な口腔ケアを指導します。また、適切な歯磨きやデンタルフロスの使用、定期的な歯科検診を行うことで、感染リスクを低減することができます。

手術中の痛みや後遺症の対策

歯根分離法は、痛みや不快感を伴う場合があります。手術中の痛みを軽減するために、適切な麻酔を行い、痛みを最小限に抑えます。また、術後の痛みに対しては、鎮痛剤の処方が可能です。

後遺症に関しては、感染や歯根の再分離が起こる可能性があるため、術後の経過観察が重要です。症状や経過を適切に評価し、必要に応じて追加治療を行います。患者様自身も、適切な口腔ケアや定期的な歯科検診を心がけることで、後遺症のリスクを軽減することができます。

歯根端切除との比較

歯根端切除は、歯の根尖部を削り、病巣を除去する方法です。これに対して、歯根分割抜去法は歯根の一部を分割し、保存が困難な歯根のみを抜去する方法です。両者の違いは主に以下の通りです。

– 適用範囲: 歯根端切除は歯根尖部の炎症や感染が原因の症状に対して行われますが、歯根分割抜去法は歯根分割が可能な範囲で歯の機能を維持したい場合に適用されます。

– 治療目的: 歯根端切除は感染部位の除去と痛みの緩和を目的としていますが、歯根分割抜去法は歯の機能を維持することが目的です。

– リスク: 歯根端切除は神経の損傷や感染拡大のリスクがありますが、歯根分割抜去法は歯根分割に伴う感染のリスクが考慮されます。どちらの方法も適切な診断と処置が重要です。

インプラントやブリッジの長期的な選択肢

歯根分割抜去法はインプラントやブリッジと比較して、長期的に安定した治療成果が期待できます。インプラントやブリッジも歯の機能を回復させる方法ですが、以下の点で歯根分割抜去法が優れています。

– 自然歯の維持: 歯根分割抜去法は歯根の一部を残すため、自然歯の感覚や咬合力を維持できます。

– コスト: インプラントやブリッジに比べ、歯根分割抜去法の治療費用は抑えられることが多いです。

– 手術リスク: インプラントは骨との結合が必要であり、手術リスクや合併症がありますが、歯根分割抜去法はそのリスクが低いです。

– 修復の容易さ: 歯根分割抜去法後の歯は、必要に応じて簡単に修復が行えます。

適切なアフターケアと歯科医院との連携

歯根分割抜去法後の適切なアフターケアが重要であり、歯科医院との連携が不可欠です。アフターケアでは、定期的な検診やクリーニング、歯石除去を行い、感染予防に努めます。また、歯周病や虫歯の早期発見と治療が大切です。治療後の歯はむし歯や歯周病に対して予防が必要なため、適切なブラッシングやフロスを習慣化しましょう。

まとめ

歯根分割抜去法とは、複数の歯根がある歯に対して行う術式で、問題のある歯根だけを分割して抜去し、問題のない歯根を保存する方法です。
この方法は適応するには条件があり、どんな歯にも使える方法ではありません。
しかし、条件が揃えば問題のある歯根だけを抜歯し、健康な歯根を保存して利用することができます。
不明点などございましたらいつでもご相談ください。

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