2025.06.22 診療コラム

見えないところにこそ、やさしさと強さを。

— THE DENTALの土台選び

こんにちは。歯科衛生士の八田です。

クラウン(被せ物)を装着する治療では、その“内側”——つまり、歯を支える「コア(土台)」の素材が、治療の予後や歯の寿命を大きく左右します。

THE DENTALではこの“見えない部分”にこそこだわり、金属のコアは一切使用していません。代わりに、

  • ファイバーコア
  • ペクトンコア
    の2種類の非金属コアを、歯の状態に応じて使い分けています。今回は、その使い分けと、特に注目していただきたい「ペクトンコア」について、少しだけご紹介します。

ファイバーコアとは?

ファイバーコアは、ガラス繊維を樹脂で固めた素材。
弾性があり、天然歯に近いしなやかさを持っているため、クラウン治療では現在の主流ともいえる土台です。

・審美性が高く、金属による歯ぐきの黒ずみが起きない
・歯根の割れ(破折)を起こしにくい
・金属アレルギーの心配がない

など、メリットも多く、多くのケースではこのファイバーコアが最適です。

それでも、ファイバーでは足りないことがある。

ただし、すべての歯が同じ状況ではありません。

たとえば…

  • 歯の根の部分(歯根)が薄くて脆くなっている
  • 歯ぎしりや食いしばりの力が強い
  • 奥歯で噛む力がとても大きい

このような「破折のリスクが高い歯」では、ファイバーコアでも力を十分に分散しきれないことがあります。

ペクトンコアという新たな選択肢

そこで私たちが選んでいるのが、ペクトン(PEKKTON®)を使ったコアです。

ペクトンは、航空宇宙産業や整形外科の人工関節などにも使われる高機能ポリマー。非常に軽く、それでいて強度があり、なおかつ歯に近い弾性をもっています。

◆ ペクトンコアの特徴

  • 高い耐久性と柔軟性を併せ持つ
    → 強い噛む力を受け止めながら、歯根へのダメージを最小限に抑えます。
  • 金属を使わないので、身体にやさしい
    → アレルギーの心配がなく、長期的にも安定。
  • 審美的にも優れている
    → 歯ぐきの変色リスクもなく、セラミックとの相性も◎。

特に咬合圧が強い奥歯のクラウンや、再治療で歯の根が薄くなっているケースなど、
「どうすればこの歯をもう一度、しっかり守れるか」
を考えたとき、私たちの答えのひとつがこのペクトンコアです。

土台は、歯の“基礎工事”のようなもの

クラウン治療というと、「見た目をキレイにする」「白い歯にする」といったイメージが先行しがちですが、私たちが大切にしているのは“内側からのケア”です。

建物にたとえるなら、コア(土台)は基礎工事のようなもの。
どれだけ立派な上物(クラウン)をのせても、土台が弱ければ長くもたせることはできません。

患者さんひとりひとりの歯の状態や噛み合わせのクセ、生活背景を診たうえで、“最適な土台”を選ぶ。
それがTHE DENTALの治療方針です。

金属を使わないという選択に、理由があります

私たちがペクトンコアやファイバーコアを選ぶ理由。それは単に「新しいから」「見た目が良いから」ということではありません。

金属の土台(メタルコア)は、確かに長年使われてきた実績ある材料です。ただ、その強度ゆえに、時として「強すぎる」ことが問題になるのです。特に、神経を取った歯や根の構造が弱くなっている歯に対しては、金属の硬さが逆にダメージとなり、歯の根っこにヒビが入ったり、割れてしまう(=破折)というトラブルを招くことがあります。

一度歯根が破折してしまうと、その歯を保存するのが難しくなり、抜歯という選択肢が浮上してきます。それをなんとか避けたい。だからこそ、歯と一緒にしなやかに“しなる”素材——ペクトンやファイバーのような、弾性を持つ素材が注目されているのです。

私たちは「一度治療した歯を、できる限り長く守っていく」ために、土台の選択にもこだわります。ペクトンコアは、特に「歯の根の形が特殊」「残っている歯質が少ない」といった繊細なケースにフィットしやすく、フルカスタムで歯に合わせた設計が可能。だから、歯を守るパートナーとして、信頼して使い続けています。

メンテナンスと定期チェックも重要です

もちろん、どんなに優れた素材でも“入れて終わり”ではありません。被せ物やその下にある土台を長持ちさせるには、定期的なチェックとクリーニングが大切です。

被せ物と歯茎の境目にプラークがたまれば、炎症やむし歯の再発リスクが上がります。だからこそ、歯科医院でのプロフェッショナルケア、そして日々のおうちでのケアの両方が欠かせません。

最後に:歯の未来を考えた素材選びを

治療を受けるとき、「見た目」や「費用」のことが気になるのは自然なこと。でも、その歯をこれから何年、何十年と使っていくことを考えるなら——「どう治すか」よりも、「どう守っていくか」が大切だと、私たちは考えています。

ペクトンコアは、そのためのひとつの選択肢。金属に頼らない、やさしく、しなやかで、歯を守る治療。そんな未来志向のケアを、私たちはこれからも続けていきます。

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