JOURNAL
前歯の先がへこんできた?
— 小さなサインに気づくとき
こんにちは。歯科衛生士の八田です。
ふと鏡を見たとき、「あれ?前歯の先、少し凹んでる?」と気づいたことはありませんか?
痛みがあるわけではないし、パッと見ても目立たない。だからといって放っておいてしまう方が多いのですが、実はそれ、歯の表面がすり減ってきているサインかもしれません。
今回は、そんな“前歯の切端の凹み”について、原因と対策をやさしく解説します。
なぜ前歯がへこむの?
前歯の先端が凹んで見えるのは、エナメル質と象牙質のすり減り方の違いが大きく関係しています。
歯の表面は、外側にある透明で硬いエナメル質、その内側に象牙質という構造になっています。エナメル質は体の中で最も硬い組織。一方、象牙質はやや柔らかく、色味もやや黄みがかっています。
毎日の噛む動きや、無意識の歯ぎしり・くいしばりなどで、歯は少しずつすり減っていきます。このとき、象牙質の方が早くすり減るため、中心が凹んだような形になるのです。
これを専門的には「咬耗(こうもう)」と呼びます。
主な原因は?
1. 咬耗(こうもう)
もっとも多いのがこのパターン。長年の噛む動作によって、エナメル質と象牙質がすり減っていきます。特に、歯の先端(切端)や噛み合わせの面(咬合面)は摩耗しやすい場所です。
2. 歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム)
夜寝ているときや、集中しているときに無意識にギリギリと噛んでいませんか?歯ぎしりは歯にかなりの力を加えてしまうため、エナメル質が割れたり、象牙質がすり減ったりしやすくなります。
3. 酸蝕症(さんしょくしょう)
炭酸飲料やスポーツドリンク、レモンなど酸性の強い飲み物・食べ物を日常的に摂ると、歯の表面が少しずつ溶けていきます。特に象牙質は酸に弱いため、へこみが進みやすい傾向があります。
4. 噛み合わせのバランスの乱れ
上下の前歯がズレて強く当たるような咬み合わせになっていると、前歯の切端に局所的な負荷がかかり、摩耗が進みやすくなります。
放っておくとどうなるの?
- 見た目の違和感(ギザギザして見える、光の反射で目立つ)
- 象牙質が露出して、知覚過敏(冷たいものがしみる)が起こることも
- かみ合わせのズレが進行して、顎関節症のリスクが上がる
- すり減りが進んで、歯が短くなったり、欠けたりしてしまう
見た目の問題以上に、噛む力のバランスが崩れることの方が深刻です。歯は1本で機能しているのではなく、上下左右のバランスで成り立っているため、1本の摩耗が他の歯にも影響を及ぼすことがあるのです。
対策はどうしたらいいの?
1. 咬耗の進行が軽度の場合:経過観察+セルフケア
- 咬耗が自然な範囲であれば、無理に削ったり詰めたりする必要はありません。
- 歯ぎしりの傾向がある方には、**ナイトガード(マウスピース)**の装着をおすすめすることも。
- 歯ブラシは柔らかめを選び、ゴシゴシ磨きを避けましょう。
2. 凹みが目立つ・しみるなど症状がある場合:レジンでの補修
- 小さな凹みであれば、**コンポジットレジン(歯科用プラスチック)**で見た目を整え、象牙質を保護することができます。
- 色や質感は自然に仕上げられるので、「治したことがわからないくらいキレイ」と感じられる方も多いです。
3. 噛み合わせに問題がある場合:バランスの調整
- 咬合診査を行い、必要に応じて噛み合わせの微調整を行います。
- くいしばりが強い方には、ボツリヌス治療で噛む筋肉の緊張を緩めるアプローチも可能です。
歯のサインは、小さな“揺らぎ”から
歯は、日々の生活習慣や体の状態を反映する鏡のようなもの。
「少しへこんでるかも」「形が変わってきた気がする」そんな小さな気づきこそが、大切なサインです。
THE DENTALでは、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや機能のバランスまでトータルに診ることを大切にしています。
「治す」だけでなく、「守る」ためのケアを、ぜひ私たちと一緒に。