JOURNAL
バイオフィルム=口内の“湿地帯”?
— 見えない世界との共生を考える
こんにちは、歯科衛生士の八田です。
ある日、ふと考えました。
口の中って、ちょっとした“湿地帯”みたいだな、と。
水分が豊富で、温かくて、栄養もある。
そんな環境には、実にさまざまな「生き物たち」が住んでいます。もちろん、私たちの歯にも。
今回は、歯の表面にひそかに広がる「バイオフィルム」という世界を、自然界の視点から、やさしく解きほぐしてみましょう。
■ 湿地帯に住む“バランスのとれた生態系”
湿地帯と聞くと、どんな風景が思い浮かびますか?
水辺に繁る草、鳥の声、そしてその中で静かに暮らす無数の微生物たち。
一見地味だけれど、豊かな生命が絶妙なバランスで共存している場所。それが湿地の特徴です。
実は、お口の中もよく似ています。
常に湿っていて、温度は約36℃前後。そこに食べ物の栄養が加わると、細菌たちにとっては“天国”のような環境です。
歯の表面には、目に見えない“膜”のようなものが形成されます。それがバイオフィルム。これはただの汚れではありません。細菌たちが力を合わせて作った“住みか”なのです。
■ バイオフィルムは“チーム”でできている
バイオフィルムは、たった一種類の菌ではなく、何十種類もの細菌が協力して構築していきます。
たとえばある菌が「足場」を作り、別の菌が「酸素を奪って住みやすく」し、また別の菌が「歯を溶かす酸を出す」……。
そんな分業制のような構造が整った“ミクロの共同体”です。
その結果、普通の歯磨きだけではなかなか壊れない強固な膜が出来上がります。これが、虫歯や歯周病の温床となってしまうのです。
つまり、自然界の湿地帯に外来種が入って生態系のバランスが崩れるように、
バイオフィルム内でも悪玉菌が増えると、たちまち“病気の森”になってしまいます。
■ バイオフィルムは「再生」する
「前にクリーニングしてもらったから、もう大丈夫!」と思っていませんか?
実は、バイオフィルムはたった1日でも再び形成されはじめ、2〜3ヶ月で成熟していきます。
つまり、一度きれいにしても“湿地”はまた元の姿に戻ってしまうのです。
THE DENTALでは、この再生サイクルに合わせて3ヶ月ごとのメンテナンスをご提案しています。
クリーニングと同時に、バイオフィルムの状態をしっかりチェックし、トラブルの芽を早めに摘み取ります。
■ 自然との共生=細菌との共生
細菌=悪、というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実はお口の中には“良い菌”もたくさん存在します。
バイオフィルムそのものが悪いのではなく、そのバランスが崩れたときに問題が起こるのです。
だからこそ、私たちが目指すのは“ゼロ”にすることではなく、健やかなバランスの維持。
湿地帯を守るように、バイオフィルムとも「共生」する。
それが、THE DENTALが考える本当の予防歯科です。
■ 最後に — 歯を守るということは、あなた自身を守ること
お口の中にある、目に見えない“湿地帯”。
その中でひっそりと生きている小さな世界の変化が、私たちの健康に大きく影響を与えることもあります。
「ちょっと歯がザラザラするな」
「最近歯ぐきの色が変わってきたかも」
そんな小さなサインを感じたら、いつでも私たちにご相談ください。
THE DENTALでは、科学と感性のバランスを大切にしながら、あなたの“お口の自然”を守っていきます。