JOURNAL
痛みのなかった親知らず。気づかないうちに手前の歯が傷ついていました
こんにちは。
THE DENTAL歯科衛生士の廣島です。
暑い日が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今回は、痛みや腫れなどの症状がまったくなかったにもかかわらず、横向きに埋まっていた親知らずによって、手前の歯に大きな問題が起きていたケースについてお話しします。
親知らずについて患者さんにお伺いすると、
「今まで一度も痛くなったことがありません」
「腫れていないので、そのままでも大丈夫だと思っています」
「昔、抜いた方がいいと言われましたが、怖くて放置しています」
とお話しされる方が多くいらっしゃいます。
親知らずは、必ず痛くなるわけではありません。
しかし、痛みがないからといって、お口の中で何も起きていないとは限りません。
今回の患者さんも、親知らずによる痛みや腫れ、違和感などは一切ありませんでした。
ところが、たまたま撮影したレントゲンを確認すると、横向きに埋まっている親知らずが、手前にある7番の歯に強く接触していました。
さらに詳しく確認したところ、7番には歯根の外部吸収と虫歯が起きていました。
横向きに埋まった親知らずとは
親知らずは、前から数えて8番目にある一番奥の歯です。
真っすぐ生えて、上下の歯でしっかり噛めており、歯磨きも問題なくできている場合には、必ずしも抜歯する必要はありません。
一方で、顎の骨の中に横向きに埋まっている親知らずを「水平埋伏智歯」と呼びます。
水平埋伏智歯は、親知らずの頭の部分が、手前にある7番の歯に向かって横からぶつかるような状態になっています。
歯ぐきの中に完全に埋まっていることもあり、ご自身では親知らずがどのような向きになっているのか確認できません。
また、親知らずの一部だけがお口の中に出ている場合には、親知らずと7番の間に食べ物や細菌が入り込みやすくなります。
ところが、その部分には歯ブラシが届きにくく、フロスや歯間ブラシでも十分に清掃できないことがあります。
毎日丁寧に歯を磨いていても、歯の位置や向きによって、どうしても清掃できない場所が生まれてしまうのです。
手前の7番に外部吸収が起きていました
今回のケースで確認された問題の一つが、7番の歯根に起きた外部吸収です。
外部吸収とは、歯の根が外側から少しずつ失われていく状態です。
今回の患者さんでは、横向きに埋まった親知らずが7番の歯根に接触し続けたことで、接触している部分の歯根が吸収されていました。
虫歯のように歯の表面から穴が開いていくのではなく、歯の根が外側から溶かされるように失われていきます。
一度吸収されてしまった歯根は、基本的には元の形には戻りません。
吸収されている範囲が小さく、歯の神経まで達していなければ、親知らずを抜歯して7番を経過観察できる可能性があります。
しかし、外部吸収が歯の神経に近い部分まで進行している場合には、根管治療が必要になることがあります。
さらに吸収が大きく、歯を残すことが難しい状態になってしまうと、親知らずだけではなく、本来残したかった7番まで抜歯しなければならない可能性があります。
親知らずそのものよりも、手前にある大切な7番が傷ついてしまうことが問題なのです。
7番の奥側には虫歯もできていました
今回のケースでは、外部吸収に加えて、7番の奥側にも虫歯が確認されました。
7番の奥側は、もともと歯ブラシが届きにくい場所です。
さらに横向きの親知らずが接触していると、親知らずと7番の間に汚れがたまりやすくなります。
患者さんご自身が毎日しっかり歯を磨いていても、その隙間まで歯ブラシの毛先を入れることは簡単ではありません。
私たち歯科衛生士も、メインテナンスの際には一番奥まで器具を入れて清掃します。
しかし、親知らずと7番が接触している部分が歯ぐきや顎の骨の中にある場合には、通常のクリーニングだけで完全に汚れを除去することはできません。
また、7番の奥側にできる虫歯は、正面からお口の中を見ただけでは分かりにくいことがあります。
歯ぐきの下や歯根に近い位置に虫歯ができている場合、レントゲンを撮影して初めて見つかることもあります。
虫歯が歯ぐきよりも深い位置まで進行すると、虫歯を取り除いて詰め物をする治療が難しくなります。
治療器具が届きにくいだけでなく、詰め物と歯の境目を適切な位置に設定できない場合もあります。
そのため、虫歯の深さや外部吸収の範囲によっては、親知らずを抜歯した後に、7番に根管治療や被せ物の治療が必要になることもあります。
なぜ、ここまで進んでも痛みがなかったのでしょうか
患者さんからすると、
「そんな状態なら、もっと早く痛みが出るのではないですか」
と思われるかもしれません。
しかし、外部吸収や7番の奥側にできた虫歯は、初期の段階ではほとんど症状が出ないことがあります。
歯の痛みは、虫歯や炎症が歯の神経に近づいたときや、親知らずの周囲に強い炎症が起きたときに現れることが多いです。
外部吸収や虫歯がゆっくり進行している場合、神経まで炎症が及んでいなければ、痛みを感じないまま状態が悪化することがあります。
今回の患者さんにも、親知らず周辺の痛みや腫れはありませんでした。
食事をしていても困ることはなく、ご本人としては特に問題を感じていませんでした。
そのため、レントゲンを撮影していなければ、さらに長い期間そのままになっていた可能性があります。
「痛くない」ということは、現在困っていないという意味ではあります。
しかし、「病気がない」「今後も問題が起きない」という意味ではありません。
水平埋伏智歯がある方は、一度状態を確認しましょう
親知らずがあるからといって、すべての方がすぐに抜歯しなければならないわけではありません。
親知らずが真っすぐ生えており、きちんと歯磨きができている場合や、顎の骨の中で手前の歯から離れて埋まっている場合には、定期的に経過観察することもあります。
また、親知らずと下顎の神経が非常に近い場合など、抜歯によるリスクを考えて経過を見るケースもあります。
大切なのは、痛みがあるかどうかだけで判断しないことです。
特に、横向きに埋まった親知らずが7番に接触している場合には、症状がなくても一度抜歯の必要性を評価した方がよいと考えます。
次のような方は、一度レントゲンで状態を確認してみてください。
過去に横向きの親知らずがあると言われた方。
親知らずの抜歯を勧められたまま、長期間経過している方。
一番奥の歯の後ろ側が磨きにくい方。
親知らずと7番の間に食べ物が詰まりやすい方。
最近、親知らずを含めたレントゲンを撮影していない方。
レントゲンでは、親知らずの向きや深さ、7番との接触状態を確認できます。
必要に応じてCTを撮影することで、7番の外部吸収の範囲や、親知らずと下顎の神経との位置関係も詳しく確認できます。
親知らずを抜く目的は、7番を守ることでもあります
親知らずの抜歯についてご説明すると、
「痛くない歯を、なぜわざわざ抜く必要があるのですか」
と質問されることがあります。
水平に埋まった親知らずを抜歯する目的は、親知らずが痛くなることを防ぐだけではありません。
手前にある7番を、虫歯や外部吸収から守ることも大きな目的です。
7番は、食事の際に強い力を受け止める大切な奥歯です。
一方で、横向きに埋まった親知らずは噛み合わせに参加していないことが多く、清掃も難しいため、残しておくことによるメリットが少ないケースがあります。
親知らずを残したことで、将来的に7番まで大きな治療が必要になるのであれば、早い段階で抜歯を検討する意味があります。
もちろん、抜歯には腫れや痛み、出血、神経への影響などのリスクがあります。
そのため、年齢だけで決めたり、すべての親知らずを一律に抜いたりするのではなく、レントゲンやCTを確認しながら、一人ひとりに合った判断をすることが大切です。
痛みが出るまで待たないでください
今回のケースで私たちが改めて感じたのは、
「痛みのない親知らずが、安全とは限らない」
ということです。
患者さんご自身は何も感じていなくても、見えない場所で7番の虫歯や歯根吸収が進んでいることがあります。
親知らずを抜くかどうか迷っている方は、すぐに抜歯を決める必要はありません。
まずは現在の親知らずの向きや、手前の歯に悪影響が出ていないかを確認することが大切です。
確認した結果、定期的な経過観察でよい場合もあります。
反対に、7番への接触や虫歯、外部吸収が確認された場合には、痛みがなくても早めに治療を検討した方がよいこともあります。
親知らずのことで気になることがある方、しばらくレントゲンを撮影していない方は、定期検診の際にお気軽にご相談ください。
大切な歯を守るために、症状が出る前から現在の状態を確認しておきましょう。
池尻大橋 一般歯科 小児歯科 矯正歯科 口腔外科 THE DENTAL











