JOURNAL
食べ物が挟まる・前歯が揺れる…放置していい?歯周病と噛み合わせの関係
みなさんこんにちは。池尻大橋の歯科医院 THE DENTALです。
今回は、定期検診で見つかった「歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい部分」と「下の前歯の揺れ」についてお話しします。
どちらも強い痛みが出るとは限らないため、そのままにしてしまいやすい症状です。しかし、食べ物が毎回同じ場所に挟まったり、歯が少しずつ揺れる状態が続いたりすると、歯ぐきや歯を支えている骨に負担がかかることがあります。
今回の患者さんでも、虫歯自体はそれほど大きな問題ではありませんでしたが、歯と歯の接触の緩みと、歯周病によって支えが弱くなった前歯への噛み合わせの負担が気になりました。
被せ物の間に食べ物が挟まる
まず気になったのが、左上の奥歯です。
隣り合う2本の歯にそれぞれ被せ物が入っていましたが、その間の接触がやや緩くなっていました。
本来、隣り合う歯同士には適度な接触があります。その接触があることで、食事のたびに食べ物が歯と歯の間へ強く押し込まれるのを防いでいます。
ところが、被せ物の形や位置、経年的な変化などによって接触が緩くなると、食べ物が毎回同じ場所に入り込むことがあります。
「食事をすると必ずここに肉が挟まる」
「フロスをしないと気持ち悪い」
という経験がある方もいらっしゃると思います。
こうした状態は、単に不快なだけではありません。
食べ物が挟まり続けると歯ぐきへの負担になる
食べ物が歯と歯の間へ強く押し込まれる状態が続くと、歯ぐきに繰り返し刺激が加わります。
さらに、食べ物やプラークが残りやすくなることで、歯ぐきの炎症を起こしやすくなります。
歯ぐきの腫れや出血が続き、歯周病がある場合には、歯を支えている骨の状態にも影響してくることがあります。
今回の患者さんでは左上だけでなく、左下にも同じように歯と歯の間のスペースが広くなっている場所がありました。
こちらは樹脂で治療されている部分同士の接触が緩くなっており、同じように食べ物が入り込みやすい状態です。
もし毎回同じ場所に食べ物が挟まるのであれば、被せ物や詰め物の形を修正したり、必要に応じてやり替えたりすることを検討します。
「食べ物が挟まるだけだから」と放置しない
患者さんからすると、食べ物が挟まることはそれほど大きな病気には感じないかもしれません。
痛みもありませんし、フロスを通せば取れるからです。
しかし、同じ場所に何年も食べ物が押し込まれ続けている場合には、その部分の歯ぐきが慢性的に炎症を起こしていることがあります。
特に歯周病がある方では、こうした局所的な問題を減らしておくことが非常に重要です。
歯周病治療では、歯石を取ることだけではなく、汚れが溜まりにくい環境をつくることも大切だからです。
下の前歯4本が少し揺れていました
今回、もう一つ重要だったのが下の前歯です。
下の前歯4本に少し動揺、つまり歯の揺れが認められました。
「歯が揺れる」と聞くと、すぐ抜けてしまうのではないかと心配になる方もいますが、今回の状態はそこまで進行したものではありません。
ただし、レントゲンを確認すると、歯の周囲にある歯根膜という組織のスペースが、他の歯と比べて広く見えていました。
歯根膜とは?
歯は骨に直接くっついているわけではありません。
歯の根と、その周囲の骨の間には「歯根膜」という非常に薄い組織があります。
歯根膜には、噛んだときの力をクッションのように受け止める役割があります。
通常、レントゲンでは歯の根の周囲に薄い線状のスペースとして確認できます。
ところが歯に強い力が加わり続けていると、このスペースが広がって見えることがあります。
例えば矯正治療中で歯を動かしている場合や、特定の歯だけ噛み合わせが強い場合などにも見られます。
今回の患者さんでは、下の前歯4本だけが他の歯と比べて明らかに歯根膜腔が広くなっていました。
歯周病で骨が減ると、同じ噛む力でも負担が大きくなる
ここで重要なのが、歯を支えている骨の量です。
健康な状態では、歯の根の周囲を十分な骨が支えています。
しかし歯周病が進行すると、歯を支えている骨が少しずつ減っていきます。
例えば、地面に深く刺さっている杭と、浅くしか刺さっていない杭を想像すると分かりやすいと思います。
同じ力を加えても、浅く刺さっている杭の方が大きく揺れます。
歯も同じです。
骨の量が減って支えが少なくなると、それまで問題にならなかった程度の噛む力でも、歯にとっては大きな負担になることがあります。
このような状態を二次性咬合性外傷と呼びます。
二次性咬合性外傷とは?
少し難しい名前ですが、簡単に言えば、
歯周病などによって歯を支える組織が弱くなったところに、噛む力が加わることで歯に過剰な負担がかかっている状態
です。
噛む力自体が極端に強くなくても、歯を支えている骨が少なくなれば相対的に負担は大きくなります。
すると歯が前後方向に揺れたり、歯根膜のスペースが広がったりすることがあります。
今回も、下の前歯4本については、歯周病による骨の減少に噛み合わせの力が加わっている可能性が高いと考えました。
揺れている歯をそのままにすると?
歯が揺れている状態が長く続くと、歯周組織にとって良い環境とは言えません。
イメージとしては、砂場に棒を刺し、その棒を何度も前後に揺らすような状態です。
何度も揺らしていると、棒の周囲の砂が徐々に崩れていきます。
歯の場合も、すでに骨の支えが少なくなっているところへ繰り返し揺さぶる力が加わると、歯周組織にさらに負担がかかります。
現在は前後方向に少し揺れる程度だったとしても、歯周病が進行すると揺れが大きくなる可能性があります。
さらに進行すると、前後左右だけでなく、歯を上から押した際に沈み込むような動揺が出ることもあります。
そこまで進むと歯を保存することが難しくなり、抜歯を検討しなければならないケースもあります。
今回の患者さんはそこまで進行しているわけではありませんが、だからといって何もしなくてよい状態とも言えません。
揺れている歯を固定する「暫間固定」
こうした場合に検討する方法の一つが、揺れている歯同士を固定する処置です。
今回であれば、下の前歯4本を裏側から細い材料で連結し、1本ずつが大きく揺れないようにします。
複数の歯を一つのグループとして固定することで、1本の歯に集中していた力を分散させることが目的です。
矯正治療後に使用するリンガルリテーナーと見た目が似ていますが、目的は異なります。
矯正後のリテーナーは歯が元の位置へ戻るのを防ぐために使用しますが、今回の固定は、歯周病によって動揺している歯を安定させ、負担を軽減するために行います。
固定はできるだけシンプルに
歯を固定すれば何でも良いというわけではありません。
下の前歯の裏側には歯石が付きやすい特徴があります。
特にこの付近には唾液腺の出口があるため、もともと歯石ができやすい場所です。
そこへ太く複雑なワイヤーを装着すると、歯磨きが難しくなり、逆にプラークや歯石が増えて歯周病を悪化させる可能性があります。
そのため当院では、必要以上に広い範囲を固定するのではなく、できるだけ必要最小限の歯を、清掃しやすい方法で固定することを考えます。
今回も、まずは揺れが認められる4本程度を固定する方法が現実的と考えました。
固定したら骨は元に戻るの?
ここも患者さんからよく聞かれる部分です。
固定をしたからといって、すでに失われた歯周病の骨が完全に元通りになるわけではありません。
しかし歯に加わる余分な揺さぶりが減れば、歯根膜の負担が軽くなり、レントゲン上で広がっていた歯根膜腔が落ち着いてくることがあります。
つまり固定の目的は、
失われた骨を元通りにすることではなく、現在残っている歯周組織をできるだけ安定した状態で維持すること
です。
固定は基本的に長期間必要になることも
今回のように、骨の支えが少なくなったことによって歯が揺れている場合、一定期間だけ固定して外せば完全に元通り、というものではありません。
骨の支えそのものが大きく回復するわけではないため、固定を外せば再び揺れが出る可能性があります。
そのため状態によっては、長期間、場合によっては半永久的に固定を維持することがあります。
もちろん、その間は定期的なクリーニングが非常に重要です。
固定装置の周囲にプラークや歯石が溜まってしまえば、歯周病を悪化させる原因になるためです。
2年前と大きく変わっていなくても安心しすぎない
今回の患者さんでは、約2年前のレントゲンとも比較しました。
幸い、骨の状態や歯の周囲の所見は大きく変化しているわけではありませんでした。
これは良い点です。
ただし、
「2年間変わっていないから、この先もずっと大丈夫」
というわけではありません。
歯周病はゆっくり進行することもありますし、噛み合わせや清掃状態、全身状態などによって進行速度が変化することもあります。
そのため、問題が小さいうちに環境を整えておくことが大切です。
今回重要だったのは虫歯よりも歯周環境
今回、虫歯も1か所確認できましたが、それほど大きなものではありませんでした。
それよりも重要だったのが、
歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい場所と、下の前歯の動揺
です。
歯科検診というと「虫歯があるかどうか」に目が行きがちですが、歯を長く残すためには虫歯だけを見ていてはいけません。
歯周病による骨の状態、噛み合わせ、歯の揺れ、詰め物や被せ物の形、食べ物が挟まりやすい場所なども非常に重要です。
まとめ
毎回同じ場所に食べ物が挟まる場合、被せ物や詰め物の接触が緩くなっている可能性があります。
その状態が続くと、歯ぐきの炎症や清掃不良につながり、歯周病のある方ではさらに注意が必要です。
また、歯周病によって歯を支えている骨が少なくなると、通常の噛む力でも歯に大きな負担が加わり、歯が揺れてくることがあります。
今回のような状態では、揺れている歯を裏側から固定し、噛む力を分散させる方法を検討することもあります。
重要なのは、
「痛くないから大丈夫」ではなく、歯が長く使える環境になっているかどうかを見ることです。
THE DENTALでは、虫歯だけでなく、歯周病や噛み合わせ、歯の動揺、過去のレントゲンとの変化まで含めて総合的に確認しています。
「最近、歯と歯の間によく食べ物が挟まる」
「前歯が少し揺れている気がする」
「昔より歯ぐきが下がってきた」
という方は、そのままにせず一度状態を確認してみてください。
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