2026.10.14 診療コラム

歯医者の治療はなぜ小分けにするの?一度に全部治療しない理由

皆さまこんにちは!池尻大橋の歯医者「THE DENTAL」歯科助手の伊東です。

歯科医院に通っていると、「今日はこの歯だけですか?」「反対側も悪いなら一緒に治療できないの?」「何回も通うより、一度にまとめて治療してほしい」と感じたことはありませんか?

特に虫歯が複数ある場合、「せっかく歯医者に来たのだから、一度に全部治してほしい」と思われる方もいらっしゃると思います。

実際、歯科治療は内容によっては同日に複数箇所を進めることも可能です。

しかし、あえて治療を何回かに分けることもあります。

これには、麻酔の範囲、治療後の食事、噛み合わせ、歯の経過観察、治療時間など医学的な理由があります。そして、健康保険を使用する「保険診療」の場合には、診療報酬上のルールや治療の手順も関係します。

今回は、「なぜ歯医者では治療を小分けにすることがあるのか?」について詳しくお話しします。

左右を同時に治療しないのは、食事への影響を考えているから

代表的なのが、左右両方の奥歯に治療が必要なケースです。

例えば、右下にも左下にも虫歯があり、どちらも麻酔を使用して治療する必要があるとします。

患者さんからすると、「せっかく来たのだから左右とも一気に治療してほしい」と思われるかもしれません。

しかし、左右両方に麻酔をすると、治療後に口の中の広い範囲で感覚が鈍くなることがあります。

麻酔が効いている間は、頬や唇、舌を誤って噛んでしまうことがあります。また、食べ物の温度や位置を感じにくくなるため、普段より食事がしづらくなります。

そのため、右側を治療した日は左側で食事ができるようにするなど、「治療後もできるだけ普段通り生活できる状態を残しておく」という考え方で治療範囲を決めることがあります。

治療した歯で問題なく噛めるか確認することも大切です

虫歯を治療したからといって、すべての歯がその瞬間から完全に違和感なく使えるとは限りません。

虫歯が深かった場合には、一時的に冷たいものがしみたり、噛んだときに違和感が出たりすることがあります。

また、詰め物や被せ物を装着した後には、噛み合わせの微調整が必要になる場合もあります。

ここで左右を同時に大きく治療してしまうと、「どちらの歯が原因で噛みにくいのか」「どの部分の噛み合わせを調整すればよいのか」が分かりにくくなることがあります。

片側を治療して問題なく使えることを確認してから、反対側へ進む。

一見すると遠回りに見えるかもしれませんが、治療後に問題が起きたときに原因を特定しやすいというメリットがあります。

深い虫歯では「経過を見る」こと自体が治療の一部です

虫歯が神経の近くまで進んでいる場合、「削って詰めれば終了」とは限りません。

できるだけ神経を残す治療を行った場合、その後に痛みが出ないか、冷たいものへの反応が落ち着くか、噛んだときに症状が出ないかなどを確認する必要があります。

治療直後には問題がなくても、数日経ってから症状が出る場合があります。

反対に、治療直後には少ししみていても、時間とともに症状が落ち着くこともあります。

そのため、一度治療を行い、その歯がどのように反応するか確認してから次の治療へ進む場合があります。

「今日はここまでにしましょう」という判断には、単に時間の問題ではなく、歯の状態を見極めるための意味があることもあります。

根管治療などは複数回に分けることがあります

歯の神経まで細菌感染が及んでいる場合に行う「根管治療」も、治療を複数回に分けることがある代表的な処置です。

根管治療では、歯の内部にある非常に細い根管を清掃・消毒し、できる限り細菌を減らしたうえで封鎖していきます。

しかし、根の中の状態や感染の程度は患者さんによって大きく異なります。

根の先に炎症がある場合、排膿がある場合、以前に根管治療をした歯を再治療している場合などでは、状態を確認しながら段階的に治療を進めることがあります。

一方で、歯の状態によっては少ない回数で終了できるケースもあります。

「根管治療だから必ず何回」と一律に決まっているわけではありません。

保険診療では「保険のルール」も関係します

そして、意外と知られていないのが健康保険を使用した治療についてです。

日本の保険診療は、歯科医院が自由に治療内容や費用を決めているわけではありません。

国が定めた診療報酬制度に基づいて、「どのような状態に対して、どのような検査や処置を行うのか」「どのような流れで治療を進めるのか」など、一定のルールの中で診療を行っています。

そのため、医学的には同日に複数の処置を行うことが可能に見えても、保険診療上の算定方法や治療の流れとの兼ね合いから、複数回に分けて治療する場合があります。

例えば歯周病治療では、検査によって現在の状態を確認し、歯石除去などの処置を行い、その後に歯周組織の状態を再評価する、といったように段階を踏んで進めることがあります。

被せ物や入れ歯、根管治療などについても、それぞれの治療に保険診療上の考え方や算定ルールがあります。

そのため、「今日時間があるから全部やってほしい」というご希望があっても、すべての処置を一日でまとめて保険診療として行えるとは限りません。

ただし、保険診療だから必ず治療を細かく分けなければならない、という意味ではありません。

同日に行うことが医学的にも保険診療上も問題ない処置であれば、まとめて治療できる場合もあります。

治療回数は、歯の状態や治療内容、患者さんの負担、そして保険診療上のルールなどを総合的に考えて決めています。

「回数を増やすために小分けにしている」わけではありません

「歯医者は何回も通わせたほうが儲かるから、わざと治療を小分けにしているのでは?」

このように感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、治療を分ける理由は一つではありません。

麻酔の範囲、治療後の食事への影響、歯の神経の反応、噛み合わせ、感染の状態、歯茎の状態、患者さんの身体的な負担、そして保険診療の場合には診療報酬上のルールなど、さまざまな要素があります。

反対に、治療上問題がなければ、一回の治療時間をある程度確保して複数箇所を進めたほうが効率的なケースもあります。

大切なのは、「回数を増やす・減らす」こと自体ではなく、その患者さんにとって安全かつ適切な治療計画になっているかどうかです。

長時間の治療が必ずしも患者さんにとって楽とは限りません

治療をまとめることができれば、通院回数を減らせる可能性があります。

これは忙しい患者さんにとって大きなメリットです。

しかし、その代わり一回あたりの治療時間は長くなります。

長時間口を開け続けることで顎が疲れたり、顎関節に負担がかかったり、同じ姿勢がつらくなったりすることがあります。

また、歯科治療では非常に細かな部分を確認しながら処置を行います。

単純に「一回の予約を長くすれば、どこまでも治療を進められる」というわけではありません。

精度を落とさず、安全に治療できる範囲で進めることが重要です。

仮歯で確認する期間が必要なこともあります

被せ物の治療などでは、最終的な歯を入れる前に仮歯を使用することがあります。

仮歯は単なる「完成までのつなぎ」ではありません。

噛み合わせ、歯の形、清掃性、歯茎との関係などを確認するための重要な役割を持っています。

特に複数の歯を治療する場合には、最終的な被せ物を一気に装着する前に、仮歯の状態で実際に生活していただき、問題がないか確認することがあります。

食事をしてみて噛みにくくないか、歯磨きしにくくないか、高さに違和感がないか。

こうした確認期間を設けることで、最終的な治療をより安定した状態で進められる場合があります。

歯茎の状態を整えてから治療することもあります

虫歯だけを見て治療計画を立てているわけではありません。

歯茎に強い炎症がある状態では、出血しやすかったり歯茎が腫れていたりするため、精密な型取りやスキャンが難しくなる場合があります。

そのため、先にクリーニングや歯周病治療を行い、歯茎の状態を改善させてから被せ物などの治療へ進むことがあります。

患者さんからすると、「虫歯があるのに、どうして先にクリーニングをするの?」と思われるかもしれません。

しかし、最終的な詰め物や被せ物を精密に作るためには、その周囲の環境を整えることも非常に重要です。

もちろん、まとめて治療できる場合もあります

ここまで治療を小分けにする理由をご説明しましたが、THE DENTALではすべての治療を細かく分けているわけではありません。

例えば、隣り合った歯に小さな虫歯があり、同じ麻酔範囲で治療できるのであれば、まとめて治療したほうが患者さんの負担を減らせることもあります。

治療内容、麻酔範囲、噛み合わせ、治療後の生活への影響、患者さんの体調、そして保険診療の場合には算定上のルールなどを確認したうえで、可能であれば複数箇所を同日に治療することもあります。

つまり、「一度に治療するのが良い」「小分けにするのが良い」という単純な話ではありません。

その患者さん、その歯、その治療内容に合わせて適切な範囲を決めることが重要です。

「できるだけ通院回数を減らしたい」という希望もお伝えください

仕事が忙しい、遠方から通院している、育児などで何度も来院することが難しいなど、患者さんによって事情は異なります。

そのため、「できるだけ一回の治療時間を長くして、通院回数を少なくしたい」というご希望があれば、遠慮なくお伝えください。

治療内容によっては、一回あたりの治療範囲を広げられる場合があります。

一方で、安全性や治療精度、経過観察の必要性、保険診療上のルールなどによって、どうしても複数回に分ける必要があるケースもあります。

その場合には、「なぜ今日はここまでなのか」「なぜ次回に分ける必要があるのか」を患者さんに理解していただくことも大切だとTHE DENTALでは考えています。

歯科治療は、単純に虫歯を見つけた順番に削っているわけではありません。

痛みや感染の有無、虫歯の深さ、噛み合わせ、麻酔範囲、食事への影響、歯茎の状態、治療後の経過、そして保険診療の場合には制度上のルールなど、さまざまな要素を考えながら治療計画を立てています。

「何回くらい通う必要がありますか?」

「できるだけまとめて治療できますか?」

「どうして今日はここまでなのですか?」

このような疑問があれば、ぜひお気軽にご質問ください。

THE DENTALでは、治療内容だけでなく、治療の順番や必要な通院回数についてもできるだけ分かりやすくご説明し、患者さんの生活スタイルも考慮しながら治療計画をご提案しています。

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