JOURNAL
「銀歯が取れた」から始まった左下6番の治療 ― 歯を残すために行った根管治療とジルコニア治療について
10年以上前に入れた銀歯が突然取れてしまった
このようなご相談は、歯科医院でも非常に多くあります。長年問題なく使えていた被せ物でも、経年劣化や歯の状態の変化によって突然外れてしまうことがあります。
今回は、左下6番(下あごの奥歯)の銀歯が外れたことをきっかけに、根管治療のやり直しから最終的なジルコニアクラウンの装着まで行った症例をご紹介します。
※個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
10年以上使用した銀歯が食事中に脱離
患者さまは左下6番に約10年前に装着した銀歯が入っていました。
これまで特に大きな症状はありませんでしたが、ある日、硬めの食事をしていた際に銀歯が外れてしまいました。
銀歯が外れた原因としては、
接着剤(セメント)の劣化
虫歯の再発
歯のひび割れ
噛み合わせの負担
歯ぎしりや食いしばり
などが考えられます。
実際に診査を行ったところ、歯の内部に問題が認められ、以前行われていた根管治療の再治療が必要な状態でした。
根管治療のやり直しが必要に
根管治療とは、歯の神経が入っていた管(根管)をきれいに清掃・消毒し、細菌感染を取り除く治療です。
過去に根管治療を受けた歯でも、
細菌が再感染した
被せ物の隙間から細菌が侵入した
土台や被せ物が劣化した
などの理由で再治療が必要になることがあります。
今回も古い材料を除去し、根管内を再度きれいに清掃・消毒する処置を繰り返しました。
奥歯の根管は複雑な形をしているため、慎重な治療が必要です。
歯ぎしりによる大きな負担
患者さまには歯ぎしりの習慣がありました。
歯ぎしりや食いしばりは、就寝中に非常に大きな力が歯に加わることがあります。
通常の食事時の噛む力よりも強い力が長時間加わるため、
被せ物が外れる
歯が割れる
土台が破損する
根に負担がかかる
などさまざまなトラブルの原因になります。
特に神経を取った歯は健康な歯よりも脆くなる傾向があるため、強い噛み合わせの力には注意が必要です。
新たなコア(土台)の作製
根管治療終了後、被せ物を支えるためのコア(土台)を作製しました。
コアは、歯の内部に固定してクラウンを支える重要な部分です。
歯質が十分に残っている場合は問題ありませんが、今回のケースでは残っている歯の量が少なく、土台の設計にも十分な配慮が必要でした。
歯が大きく失われている場合、被せ物だけで支えることが難しくなります。
そのため、歯をできるだけ保存しながら長持ちする土台を作ることが重要になります。
歯がほとんど残っていなかった
診査を進めると、歯ぐきの上に見えている歯の部分が少ない状態でした。
クラウンを安定して装着するためには、ある程度の歯の高さが必要です。
しかし歯の残存量が少ない場合、
被せ物が外れやすい
噛む力に耐えられない
歯根破折のリスクが高くなる
といった問題が起こります。
特に今回選択したジルコニアクラウンは強度が高い反面、しっかりと支えられる歯質が必要になります。
そのため、そのままでは十分な維持力を得ることが難しい状態でした。
電気メスを用いた歯肉整形
そこで今回は電気メスを使用し、歯ぐきの形態を整える処置を行いました。
歯ぐきの一部を調整することで、歯の見えている部分を増やし、被せ物を安定させるためのスペースを確保しました。
この処置によって、
被せ物の適合性向上
清掃性の改善
長期的な安定性の向上
見た目の改善
などのメリットがあります。
歯を抜歯せずに残すためには、このような前処置が非常に重要になるケースがあります。
ジルコニアクラウンを選択
最終的な被せ物にはジルコニアクラウンを装着しました。
ジルコニアは人工ダイヤモンドにも使用される非常に強度の高い素材です。
メリットとして、
① 高い強度
奥歯の強い咬合力にも耐えやすく、歯ぎしりがある患者さまにも適しています。
② 金属を使用しない
金属アレルギーの心配がなく、歯ぐきの変色も起こりにくい特徴があります。
③ 汚れが付きにくい
表面が滑沢なためプラークが付着しにくく、虫歯や歯周病のリスク軽減にもつながります。
④ 見た目が自然
銀歯とは異なり、天然歯に近い色調を再現できます。
今回の症例では、強い噛み合わせにも耐えられるようジルコニアが適していると判断しました。
治療後に重要なこと
治療が終わっても、それで終わりではありません。
特に歯ぎしりがある方は、
ナイトガード(マウスピース)の使用
定期検診
噛み合わせの確認
クリーニング
を継続することが大切です。
せっかく治療した歯も、強い力がかかり続けることで再びトラブルが起こる可能性があります。
長く健康な状態を維持するためには、治療後のメンテナンスが欠かせません。
まとめ
今回の症例では、
10年以上使用した銀歯が脱離
根管治療の再治療
新しいコアの作製
歯ぎしりによる負担への配慮
電気メスによる歯肉調整
ジルコニアクラウンの装着
という流れで治療を進めました。
歯の残存量が少なく難しい症例でしたが、歯を保存するためにさまざまな処置を組み合わせることで、最終的に機能的で審美的な修復を行うことができました。
「昔入れた銀歯が外れた」「何度も同じ歯の治療をしている」「歯ぎしりがあって被せ物がよく外れる」といったお悩みがある方は、早めの受診をおすすめします。
症状がない場合でも、被せ物の内部で問題が進行していることがあります。定期的なメンテナンスを受けることで、大切な歯を長く守ることにつながります











