2026.07.26 診療コラム

虫歯を、なぜその場で白い樹脂だけで詰めないのか CR・ダイレクトボンディング・型取りの詰め物の違いについて

こんにちは。
THE DENTAL歯科衛生士の廣島です。

今回は、診療中やスタッフとの会話でもよく話題になる「奥歯の虫歯をどう治すか」についてお話しします。

虫歯治療というと、多くの方が、

「削って白い材料を詰める」

というイメージを持たれていると思います。

実際に、CRと呼ばれる白い樹脂の材料を使って、その日のうちに虫歯を詰める治療はよく行われています。
小さな虫歯であれば、CRで十分きれいに治せるケースもあります。

ただ、すべての虫歯をCRで治すのが良いかというと、そうではありません。

特に奥歯、なかでも6番・7番と呼ばれる大きな奥歯は、噛む力が非常に強くかかる場所です。
そのため、虫歯の大きさや場所によっては、その場で樹脂を詰めるよりも、型取りをして詰め物を作った方が長持ちしやすいことがあります。

今回は、なぜTHE DENTALでは奥歯の治療で「型取りをして作る詰め物」を選択することがあるのか、その理由をお話しします。

まず、CRという材料についてです。

CRは、コンポジットレジンと呼ばれる白い樹脂の材料です。
歯の色に近く、削った部分に直接詰めて光で固めることができます。

メリットは、治療回数が少なく済むことです。
小さな虫歯であれば、その日のうちに治療が終わることもあります。
また、歯を削る量を比較的少なくできることもあります。

写真:CR修復の一例。白い材料で修復されていますが、範囲や部位によっては耐久性や境目の管理が重要になります。

一方で、CRには弱点もあります。

それは、摩耗しやすいことです。

私たちの歯は、毎日食事をするたびに強い力を受けています。
特に奥歯は、食べ物をすりつぶすために大きな力がかかります。

天然の歯でさえ、長年使っていると少しずつすり減っていきます。
そう考えると、樹脂であるCRが奥歯の強い力に長期間耐え続けるのは、なかなか大変です。

もちろん、材料も日々進化しています。
昔に比べると、CRもかなり良くなっています。

それでも、奥歯の広い面や、噛む力が強くかかる場所に大きく使った場合、少しずつすり減ったり、欠けたり、段差ができたりすることがあります。

もうひとつ大切なのが、CRは光で固める時にわずかに縮むという点です。

CRは、柔らかい状態で歯に詰めた後、光を当てて固めます。
この時、材料は少し収縮します。

この収縮自体は、材料の性質として避けられないものです。
歯科医師はその影響をできるだけ少なくするために、少しずつ詰めたり、角度を考えたり、接着操作を丁寧に行ったりします。

ただ、それでも目に見えないレベルで、歯と材料の境目に小さな隙間が生じるリスクはあります。

この小さな隙間が、将来的に虫歯の再発につながることがあります。

特に注意が必要なのが、歯と歯の間の虫歯です。

歯と歯の間は、もともと見えにくく、磨きにくい場所です。
さらに、歯ぐきに近い部分は湿気も多く、唾液や歯肉溝からの水分の影響を受けやすい場所です。

CRは接着の治療なので、乾燥状態をきちんと保つことが非常に大切です。
水分が入ると、接着が不安定になることがあります。

歯と歯の間、特に歯ぐきに近い深い部分の虫歯をCRで詰める場合、どれだけ丁寧に行っても、接着の難しさがあります。
そのため、将来的にその境目から虫歯が再発するリスクが高くなることがあります。

このような理由から、奥歯の虫歯、特に範囲がある程度大きいものや歯と歯の間にかかるものでは、型取りをして詰め物を作ることがあります。

型取りをして作る詰め物には、いくつかの種類があります。
セラミック、ゴールド、PGA、ジルコニア系の材料など、症例によって選択肢は変わります。

こうした詰め物は、お口の外で技工士さんが形を作ります。
そのため、噛む面の形、歯と歯の接触、清掃性、適合などを、より細かく作り込むことができます。

また、材料そのものがすでに固まった状態でできあがってくるため、口の中で大きく固めるCRとは違い、硬化時の収縮の影響を受けにくいという利点があります。

もちろん、詰め物を入れるためには、歯と詰め物の間にわずかなスペースは必要です。
そのスペースを、接着性のあるセメントでしっかり埋めていきます。

きちんと設計し、きちんと接着できれば、歯と詰め物が一体化するような治療を目指すことができます。

奥歯の治療で大切なのは、「今きれいに見えるか」だけではありません。

何年後にどうなっているか。
同じ場所に虫歯が再発しないか。
噛む力に耐えられるか。
歯と歯の間に物が詰まりにくいか。
患者さんが清掃しやすい形になっているか。

そういったことまで考えて治療する必要があります。

では、CRは良くない治療なのでしょうか。

決してそうではありません。

CRが向いているケースもたくさんあります。
例えば、小さな虫歯、前歯の審美的な修復、噛む力がそれほど強くかからない部分、削る量を最小限にしたいケースなどでは、とても有効な治療です。

大切なのは、CRが良い・悪いという単純な話ではなく、場所と大きさに合わせて使い分けることです。

また、患者さんからよく聞かれるのが、

「CRとダイレクトボンディングは違うんですか?」

という質問です。

ダイレクトボンディングも、大きく分類すれば白い樹脂系の材料を直接詰める治療です。
ただし、一般的な保険診療で使われるCRと、自由診療で使うダイレクトボンディング用の材料では、材料の性質や審美性、操作性、耐久性に違いがあります。

ダイレクトボンディングでは、より審美性の高い材料を使い、歯の色や透明感、形を細かく再現していきます。
前歯のすき間、欠け、古い詰め物の変色などでは、非常にきれいに仕上がることがあります。

写真:ダイレクトボンディングの一例。歯の形や艶、周囲とのなじみを整えながら、自然な見た目を目指して修復します。

奥歯にも使うことはありますが、それでも噛む力が強い場所や、範囲が大きい場合には、やはり型取りをした詰め物の方が向いていることもあります。

つまり、ダイレクトボンディングも万能ではありません。

どの材料を使うかは、見た目だけでなく、力のかかり方、虫歯の深さ、範囲、歯の残り方、歯ぐきとの位置関係などを見て判断します。

奥歯の治療では、特に「長持ちする形」を考えることが重要です。

その場では簡単に終わる治療でも、数年後に欠けたり、すり減ったり、境目から虫歯になったりすれば、再治療が必要になります。
再治療を繰り返すたびに、歯は少しずつ削られていきます。

最初は小さな詰め物だったものが、再治療を重ねるうちに大きな詰め物になり、やがて被せ物になり、神経の治療が必要になることもあります。

だからこそ、最初の治療でどこまで考えるかがとても大切です。

患者さんにとっては、

「白い材料でその日に詰められます」

と言われた方が、わかりやすく、負担も少なく感じるかもしれません。

一方で、私たち歯科医師としては、

「この場所は本当にその治療で長持ちするのか」

を考えなければいけません。

特に奥歯の6番・7番は、一生の中でとても重要な歯です。
噛む力の中心になりやすく、失うと食事のしやすさにも大きく関わります。

そのため、治療方法を選ぶ時には、短期的な楽さだけでなく、長期的な安定性を大切にしています。

もちろん、すべての方に同じ治療をおすすめするわけではありません。
患者さんのご希望、費用、通院回数、噛み合わせ、歯の状態を総合的に考えて、現実的に一番良い方法を一緒に考えていきます。

ただ、奥歯の虫歯治療で、

「なぜ今回はCRではなく、型取りの詰め物をすすめるのか」

という場面には、必ず理由があります。

それは、治療を大きくしたいからではありません。
できるだけ長く、その歯を守りたいからです。

虫歯治療は、削って詰めて終わりではありません。

その歯をこの先どう使っていくか。
再治療をできるだけ減らせるか。
患者さんが毎日安心して噛めるか。

そこまで考えて治療方法を選ぶことが大切です。

奥歯の詰め物が欠けた。
昔の白い詰め物がすり減っている。
歯と歯の間に食べ物が詰まる。
何度も同じ場所が虫歯になる。

このような方は、単に詰め直すだけではなく、なぜそうなっているのかを一度確認することをおすすめします。

THE DENTALでは、虫歯の大きさだけでなく、噛み合わせ、清掃性、材料の特性まで含めて、できるだけ再治療を少なくするための治療計画をご提案しています。

池尻大橋 一般歯科 小児歯科 矯正歯科 口腔外科 THE DENTAL

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