JOURNAL
歯ぎしりの治療は、20代から考えた方がいいのかもしれない
こんにちは。
池尻大橋の歯科医院、THE DENTAL歯科衛生士の廣島です。
先日、診療の合間に院長とホワイトニングについて話していました。
「ホワイトニングをしたとき、かなり歯がしみた」
「呼吸をするだけでも痛かった」
そんな話をしているうちに、なぜ歯がしみるのか、歯に細かいひびが入っているのではないか、という話になり、いつの間にか話題は歯ぎしりや食いしばりへと移っていきました。
歯科医院では、こうした何気ない会話から、普段の診療で感じている疑問や、自分たちなりの考えが深まることがあります。
今回はその中から、「歯ぎしりは、いつから対策した方がいいのか」という話を書いてみたいと思います。
歯ぎしりにはいくつかのタイプがあります
一般的に「歯ぎしり」とひとまとめにされますが、実際にはいくつかの動きがあります。
歯を強く噛みしめたまま力を加え続けるものを、クレンチングと呼びます。
歯を噛み合わせた状態で、左右にギリギリと動かすものがグラインディングです。
そして、上下の歯をカチカチと細かく合わせるような動きを、タッピングと呼びます。
院長は、どちらかというとタッピングをしているようです。
寝ているときに「カチカチ」と歯を合わせているらしく、眠りが浅くなったタイミングで、自分でも気がつくことがあります。
一方で、寝ている間に大きな音がするほど歯ぎしりをしていても、本人にはまったく自覚がないケースもあります。
家族や一緒に旅行へ行った人から、
「夜中にすごい音がしていた」
「家具が動いたのかと思った」
と言われ、初めて歯ぎしりに気づく方もいます。
これが歯ぎしりの難しいところです。
日中の癖であれば、自分で意識して止めることもできます。しかし、睡眠中の動きは、基本的には本人の意思でコントロールできません。
歯ぎしりは、なぜ起こるのでしょうか
患者さんからもよく、
「歯ぎしりの原因はストレスですか?」
と聞かれます。
たしかに、ストレスや緊張、自律神経の状態などが関係している可能性はあります。
ただ、歯ぎしりにはさまざまな要素が関係しており、「この原因を取り除けば完全に止まる」と言い切れるほど単純なものではありません。
そもそも、現代の生活からストレスを完全になくすことは、ほとんど不可能です。
仕事をしていてもストレスはありますし、仕事をしていなくても、人間関係や生活環境、睡眠不足などがストレスになることがあります。
仮に、草原の中で毎日ゆっくり過ごせる生活になったとしても、今度は刺激がないこと自体をストレスに感じるかもしれません。
そのため、「ストレスをなくしましょう」と伝えるだけでは、歯科治療として十分ではないと感じます。
歯ぎしりの原因を完全に特定することが難しい以上、現在の歯科治療では、歯ぎしりそのものを止めるというよりも、歯ぎしりによって起こるダメージから歯を守ることが中心になります。
マウスピースは歯ぎしりを治すものではありません
歯ぎしりや食いしばりが強い方には、就寝時に使用するマウスピース、いわゆるナイトガードをご提案することがあります。
ただし、ナイトガードを装着したからといって、歯ぎしりそのものが完全になくなるわけではありません。
マウスピースの大きな目的は、歯と歯が直接強く接触することを避け、歯の摩耗やひび割れ、詰め物や被せ物の破損などを防ぐことです。
つまり、原因を取り除く治療というよりも、ダメージを減らすための治療です。
「対症療法なら、やっても意味がないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、歯ぎしりによる負担は、毎晩少しずつ積み重なっていきます。
1日や1週間で急激に歯が削れるわけではありませんが、5年、10年、20年と続けば、歯の形そのものが変化していきます。
この小さな積み重ねを少しでも減らすことには、大きな意味があります。
歯の山がなくなると、顎が自由に動きすぎることがあります
本来、奥歯の噛む面には山と谷があります。
この凹凸が上下で組み合わさることで、噛み合わせが安定し、顎の動く方向にもある程度の制限がかかっています。
ところが、長期間にわたって歯ぎしりを続けていると、歯の山が少しずつ削れ、噛む面が平らになっていきます。
平らになることで、顎がさまざまな方向へ動きやすくなり、さらに歯ぎしりの動きが大きくなる可能性もあります。
これはあくまでも、患者さんの歯の状態を長く見てきた中で私が感じている部分も含まれますが、歯が削れることで動きが自由になり、結果として摩耗が加速しているように見えるケースは少なくありません。
歯の表面を覆っているエナメル質がなくなり、その内側の象牙質が見えてくると、歯が黄色く見えたり、しみやすくなったりすることもあります。
さらに、酸性の飲み物や食べ物が加わると、歯ぎしりによる摩耗だけでなく、酸によって歯が溶ける「酸蝕」の影響が重なることもあります。
この状態になってから、削れた部分だけを白い樹脂で埋めても、強い力が続いていれば、また欠けたり外れたりする可能性があります。
ただ削れた部分を埋めれば終わり、というほど単純ではありません。
本当に困るのは、将来治療が必要になったときです
20代や30代では、多少歯が削れていても、痛みがなく、食事にも困らないことがあります。
そのため、本人はあまり深刻に感じません。
しかし、歯ぎしりによって歯が大きく削れた状態で、将来虫歯になったり、歯を失ったりすると、治療の選択肢が狭くなることがあります。
例えば、詰め物や被せ物を入れたくても、材料を入れるための高さが足りない。
被せ物を入れても、噛む力が強すぎて割れてしまう。
インプラントやブリッジを入れたくても、周囲の歯がすでに大きく削れていて、噛み合わせを一部分だけ直すことが難しい。
こうなると、1本だけを治療するのではなく、噛み合わせ全体を考えながら治療しなければならない場合があります。
時間も費用もかかり、治療の規模が大きくなってしまいます。
だからこそ、歯ぎしりの対策は、歯が大きく削れてから始めるのではなく、まだ健康な歯が残っているうちに始める方が、本来は効果的なのではないかと考えています。
歯ぎしりへの対策は20代がベストなのかもしれません
歯ぎしりに対するマウスピースを作るタイミングとして、実は20代頃が重要なのではないか。
最近、診療をしながらそのように感じることがあります。
20代では、歯も比較的健康で、被せ物や詰め物も少なく、歯の形もまだしっかり残っていることが多いです。
この段階で夜間の負担を減らすことができれば、将来的な摩耗や破折を予防できる可能性があります。
ただ、若い方ほど危機感を持ちにくいという難しさもあります。
痛くない。
食べられる。
見た目もそれほど変わっていない。
その状態で、
「将来のためにマウスピースを作りましょう」
と言われても、必要性を実感しにくいのは当然です。
しかし、歯科治療には、症状が出てからでは元の状態に戻せないものが多くあります。
削れてしまったエナメル質は、自然には元に戻りません。
割れてしまった歯も、完全に元通りになるわけではありません。
歯を守る治療は、何か問題が起きてからではなく、問題が起こる前に行う方が、圧倒的に負担が少なくなります。
40代や50代からでは遅いのでしょうか
ここまで読むと、
「もう歯が削れているから、今さらマウスピースを作っても意味がないのでは?」
と思われる方もいるかもしれません。
もちろん、そのようなことはありません。
20代の頃と比べれば、すでに起きてしまった変化を元に戻すことはできません。しかし、これ以上悪化することを防ぐ意味は十分にあります。
歯が削れている方ほど、今残っている歯の形を守ることが重要です。
また、すでに詰め物や被せ物、インプラントなどが入っている方は、それらを長く使用するためにも、歯ぎしりへの対策が必要になる場合があります。
始めるなら、早い方が良い。
ただし、遅すぎるということはありません。
痛くなる前に、自分の歯の癖を知る
歯ぎしりや食いしばりは、虫歯のように黒く見えるわけではありません。
歯周病のように出血するとも限りません。
そのため、自分では問題に気づきにくいものです。
しかし、歯科医院で口腔内を確認すると、
歯の先端が平らになっている。
犬歯の先が丸くなっている。
歯に細かいひびが入っている。
詰め物が頻繁に欠ける。
頬の内側に噛んだ跡がついている。
舌の縁に歯型がついている。
顎の筋肉が張っている。
こうしたサインが見つかることがあります。
痛みがなくても、歯からはすでにメッセージが出ているかもしれません。
歯ぎしりの原因を完全に解明することは難しくても、歯ぎしりによってどのような負担がかかっているのかを確認することはできます。
「まだ痛くないから大丈夫」ではなく、今の状態を知り、将来起こり得る変化に備える。
それが、歯を長く残すための大切な考え方だと思います。
歯ぎしりや食いしばりを指摘されたことがある方、朝起きたときに顎が疲れている方、歯の先端が平らになってきたと感じる方は、一度ご相談ください。
現在の歯の状態や噛み合わせを確認したうえで、マウスピースが必要かどうかも含めてご説明します。
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