2026.08.05 診療コラム

〜親知らずを抜くのが怖い方へ〜痛みや出血が苦手でも抜歯は受けられる?

皆さま、こんにちは!
池尻大橋の歯科医院、THE DENTAL歯科助手の伊東です。

「親知らずを抜いた方がよいと言われたけれど、怖くて予約できない」

「抜くときに痛そう」

「血を見るのが苦手なので、考えるだけで気分が悪くなる」
親知らずの抜歯についてお話しすると、このような不安を口にされる方は少なくありません。
親知らずの抜歯は、通常の虫歯治療とは違い、「歯を抜く」という言葉だけでも強い印象があります。

実際の処置を見たことがなくても、歯ぐきを切る、骨を削る、血がたくさん出るといった場面を想像し、怖くなってしまう方もいます。

しかし、親知らずの抜歯は、何も分からないまま突然始めるものではありません。
まずはレントゲンやCTなどで親知らずの位置や向き、周囲の神経や骨との関係を確認し、抜歯が本当に必要なのか、どのような方法で抜くのかを検討します。

今回は、親知らずを抜くのが怖い方に向けて、抜歯中の痛みや出血、処置の流れ、抜歯後に気をつけることについてお話しします!

親知らずは、すべて抜かなければいけないわけではありません

親知らずがあるからといって、必ず抜歯しなければならないわけではありません。
まっすぐ生えており、上下の親知らずがきちんとかみ合っていて、歯磨きも問題なくできている場合には、そのまま経過を確認することがあります。

一方で、親知らずが横向きや斜め向きに生えている場合、歯ぐきの中に半分埋まっている場合、手前の歯との間に汚れがたまりやすい場合には、炎症や虫歯を繰り返すことがあります。
日本口腔外科学会も、親知らずの周囲が腫れる智歯周囲炎や、痛み、虫歯、歯周病などがある場合を、抜歯を検討する状態として挙げています。

大切なのは、「親知らずがあるから抜く」のではなく、残しておくことによる将来的なリスクと、抜歯に伴う負担を比べて判断することです。

今は症状がなくても、手前の歯に悪影響が出る可能性が高い場合には、炎症が起こる前に抜歯を検討することがあります。
反対に、抜歯によるリスクの方が高いと判断される場合は、すぐには抜かず、定期的に状態を確認することもあります。

まずは「抜くかどうかを相談するだけ」という気持ちで受診していただいて構いません。
親知らずを抜くときは、麻酔をしてから処置します
親知らずの抜歯で最も多い不安は、やはり痛みだと思います。
通常は、親知らずの周囲に局所麻酔を行い、十分に麻酔が効いたことを確認してから処置を始めます。
局所麻酔は、痛みの信号が脳へ伝わるのを抑え、処置を行う部分の感覚を麻痺させるものです。
麻酔が効いていれば、歯を抜くときの鋭い痛みは基本的に抑えられます。
ただし、歯を押される感覚、引っ張られる感覚、器具が触れている感覚、振動や音などは残ることがあります。

これは麻酔が効いていないという意味ではありません。局所麻酔では、痛みを抑えながらも、圧力や動きを感じることがあります。

「押されている感じが怖い」

「少しでも痛みを感じたら止めてほしい」
という場合は、処置前に伝えてください。

抜歯中は話しにくくなるため、痛みや苦しさを感じたときには左手を上げるなど、事前に合図を決めておくと安心です。
合図があればいったん処置を止め、麻酔の効き方や体調を確認します。
怖い気持ちを我慢して、平気なふりをする必要はありません。
麻酔の注射が怖い方も少なくありません

「抜くことより、麻酔の注射が怖い」という方もいます。

麻酔は歯ぐきに注射するため、針が入るときや麻酔薬が入るときに刺激を感じることがあります。
特に緊張していると、体に力が入り、普段より痛みを強く感じやすくなることがあります。

注射が苦手な方は、診療が始まる前にそのことを伝えておくことが大切です。

麻酔を急いで入れず、様子を確認しながら進めることで、負担を抑えられる場合があります。
また、過去に麻酔で気分が悪くなった経験がある方、動悸が強く出た方、麻酔が効きにくかった方は、必ず事前にお知らせください。
抜歯中は緊張や局所麻酔の影響によって、血圧や脈拍に変化が起こることがあります。前日はできるだけ睡眠をとり、体調を整えて抜歯を受けることも大切です。

横向きの親知らずは、どのように抜くの?

親知らずがまっすぐ生えていて、歯の頭が十分に見えている場合は、比較的シンプルに抜けることがあります。
一方、下顎の親知らずが横向きに埋まっている場合や、歯ぐきから一部分しか出ていない場合は、そのままの形では取り出せないことがあります。

その場合は、必要な範囲で歯ぐきを開き、親知らずの周囲の骨を一部削ったり、歯をいくつかに分割したりして取り出します。処置後は、必要に応じて歯ぐきを縫合します。

「歯を分割する」と聞くと、さらに怖く感じるかもしれません。
しかし、大きな歯を無理に一度で取り出すよりも、小さく分けた方が周囲の組織への負担を抑えられる場合があります。

処置方法は、親知らずの向き、根の形、骨への埋まり方、神経との位置関係によって変わります。
そのため、インターネットで見た他の方の抜歯体験が、そのまま自分にも当てはまるとは限りません。
数分で抜ける親知らずもあれば、歯ぐきや骨への処置が必要で、時間がかかる親知らずもあります。

事前の画像診断を行い、ご自身の親知らずがどのような状態なのかを確認することが重要です。
血を見るのが苦手でも大丈夫です

親知らずの抜歯では、歯ぐきや歯を支えている組織から出血します。
ただし、処置中は歯科医師やスタッフが出血の状態を確認しながら進めます。

抜歯後にはガーゼをかんで圧迫し、止血を確認してから終了します。
口の中では、少量の血液でも唾液と混ざることで、実際より多く見えることがあります。

そのため、帰宅後に唾液が赤くなっていると、「大量に出血しているのではないか」と不安になる方もいます。

抜歯後に少量の血がにじむことはありますが、清潔なガーゼを抜歯部位に当てて、一定時間しっかりとかむことで止まるケースが一般的です。日本口腔外科学会も、抜歯後の多少の出血には、清潔なガーゼなどをかんで圧迫止血する方法を案内しています。

血を見ると気分が悪くなる方は、無理に抜歯した場所を鏡で確認する必要はありません。
処置中も、器具や抜いた歯を見せないでほしい、血液が付いたガーゼを見えないようにしてほしいと、事前に伝えていただいて構いません。

「血が苦手です」と一言伝えていただくだけでも、診療台を起こすタイミングや説明の仕方などに配慮しやすくなります。

抜歯後の痛みはどのくらい続く?

抜歯中は麻酔によって痛みを抑えますが、麻酔が切れた後には、傷口の痛みや腫れが出ることがあります。
痛みや腫れの程度には個人差があり、親知らずの位置や処置の内容によっても異なります。
まっすぐ生えている上顎の親知らずと、骨の中に横向きに埋まっている下顎の親知らずでは、術後の負担が同じとは限りません。

難しい親知らずの抜歯では、処置後数日間に痛みや腫れが強くなり、その後少しずつ落ち着いていくことがあります。
通常は、処方された鎮痛薬を指示どおり使用しながら経過を見ます。

痛みが強くなってから薬を飲むより、歯科医師から服用方法の指示がある場合には、その指示に従って使用してください。

市販薬を追加する場合も、すでに処方された薬との重複や、持病、アレルギーなどに注意が必要です。自己判断で複数の鎮痛薬を併用せず、歯科医師または薬剤師へ確認しましょう。

抜歯後の血のかたまりは、傷を治すために必要です
親知らずを抜いた後の穴には血液がたまり、血のかたまりが作られます。

この血のかたまりは、単なる出血の残りではありません。

抜歯した部分を保護し、傷が治っていくために重要な役割を持っています。

抜歯当日に何度も強くうがいをしたり、舌や指で抜歯した穴を触ったりすると、血のかたまりが取れてしまうことがあります。
血のかたまりが失われ、骨の表面が露出した状態になると、「ドライソケット」と呼ばれる強い痛みが生じることがあります。

ドライソケットでは、一度軽くなりかけた痛みが抜歯後数日してから強くなる、耳の方まで響く、嫌な味や口臭が出るといった症状がみられることがあります。

抜歯当日は、口の中が気になっても、強いうがいを繰り返さないことが大切です。
食事、歯磨き、入浴、飲酒、運動などについては、抜歯後に受けた説明に従ってください。

出血が止まらない場合はどうすればよい?

抜歯後に血が少しにじみ、唾液が薄い赤色になる程度であれば、すぐに異常とは限りません。
出血が気になる場合は、抜歯部位に清潔なガーゼを置き、ずれないようにしっかりとかんで圧迫します。
途中で何度も外して確認すると、でき始めた血のかたまりが崩れてしまうことがあります。

それでも出血が続く場合、口の中に大きな血のかたまりが繰り返しできる場合、ガーゼがすぐに真っ赤になるような出血が続く場合は、抜歯を行った歯科医院へ連絡してください。
血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方、血液の病気がある方、肝臓の病気がある方などは、出血が止まりにくくなる可能性があります。

服用中の薬は、抜歯前に必ず歯科医師へ伝えてください。

特に、抗血小板薬や抗凝固薬などを服用している場合でも、ご自身の判断で薬を中止してはいけません。薬を継続するか調整するかは、処方した医師と歯科医師が全身状態を確認して判断します。

怖い気持ちは、抜歯前にそのまま伝えてください

「大人なのに怖いと言うのは恥ずかしい」

「迷惑をかけそうだから我慢しよう」

そう思う必要はありません。

親知らずの抜歯が怖いこと、血を見ると気分が悪くなること、過去に歯科治療でつらい経験をしたことは、診療前に伝えてください。
あらかじめ分かっていれば、処置の手順を細かく説明する、反対に必要以上に詳しく説明しない、器具や抜いた歯を見えないようにする、途中で休憩を入れるなど、その方に合わせた対応を相談できます。

詳しく知った方が安心できる方もいれば、処置内容を細かく聞くほど想像してしまい、怖くなる方もいます。

「始める前に全部説明してほしい」

「細かい処置内容は聞きたくないので、必要なことだけ教えてほしい」
どちらも間違いではありません。

ご自身が安心しやすい説明の方法を伝えてください。
相談した日に必ず抜くわけではありません
親知らずが気になって受診したからといって、診察当日に必ず抜歯するわけではありません。
まずはお口の中を確認し、レントゲンやCTなどで親知らずの状態を調べます。

炎症が強いときには、先に炎症を落ち着かせてから抜歯することもあります。

また、親知らずの根と神経が近い場合、持病や服用薬への配慮が必要な場合、処置の難易度が高い場合には、専門的な医療機関をご紹介することもあります。

「今日は検査と説明だけにしたい」

「家族と相談してから決めたい」という希望があれば、遠慮なくお伝えください。

何をされるか分からないまま、突然抜歯が始まることはありません。
親知らずを抜くメリット、抜かずに残す場合のリスク、抜歯によって起こり得る症状について説明を受け、納得してから決めることが大切です。

親知らずの怖さは、分からないことを減らすと軽くなることがあります
親知らずの抜歯が怖いという気持ちは、決して大げさなものではありません。

痛み、出血、腫れ、処置中の音、抜歯後の生活など、不安になる理由は人それぞれです。
ただ、「抜歯は怖いもの」と漠然と考えている状態と、自分の親知らずの位置や処置方法を理解している状態では、感じ方が変わることがあります。

すべての親知らずを抜く必要があるわけではありません。

また、抜歯が必要な場合でも、麻酔を行い、痛みや体調を確認しながら処置を進めます。
血を見るのが苦手な方は、見えないようにしてほしいと伝えていただいて構いません。
まずは抜くためではなく、「自分の親知らずはどのような状態なのか」を確認するところから始めてみてください。

怖い気持ちも含めて相談しながら、ご自身に合ったタイミングと方法を一緒に考えていきましょう!

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