JOURNAL
子どもの矯正で「頭につける装置」を使うことがある理由
将来、歯を抜かずに矯正できる可能性とヘッドギアの役割
こんにちは。池尻大橋にある歯科医院THE DENTALです。
夏休みに入り、お子さんの歯並びや噛み合わせについて、矯正相談を受ける機会が増えてきました。
子どもの矯正相談では、保護者の方から、
「今すぐ矯正を始めた方がよいのでしょうか」
「大人の歯が全部生えてからでは遅いですか?」
「子どものうちに矯正すると、歯を抜かずに済みますか?」
といったご質問をよくいただきます。
先日の診察でも、噛み合わせを確認しながら、
「大人になってから治療する場合は、上の4番の歯を左右2本抜いて、前歯を正しい位置まで下げる方法を選ぶ可能性があります」
とご説明しました。
ここでいう「4番」とは、前から4番目にある第一小臼歯です。
なぜ、まだ虫歯にもなっていない健康な歯を抜く可能性があるのでしょうか。
そして、なぜ子どものうちであれば、歯を抜かずに治療できる可能性があるのでしょうか。
今回は、子どもの矯正で使用することがある「ヘッドギア」という装置を中心に、成長期に矯正治療を行う意味についてお話しします。
上の歯が前にずれている「Ⅱ級」の噛み合わせ
今回のお子さんは、上の奥歯が下の奥歯に対して前方に位置している「Ⅱ級」と呼ばれる噛み合わせの傾向がありました。
さらに、噛み合わせが深く、下の前歯が上の前歯に大きく隠れる「過蓋咬合」の傾向もみられました。
Ⅱ級の噛み合わせには、
・上の歯列や上顎が前に出ている
・下顎が後ろに位置している
・上の奥歯が前に移動している
・上の前歯が前方に傾いている
・上下の顎の大きさや位置関係に差がある
など、さまざまな原因があります。
見た目が似ていても、原因が違えば治療方法も変わります。
そのため、口の中を見ただけで、
「この装置を使えば大丈夫です」
「必ず歯を抜かずに治療できます」
と決めることはできません。
大人になってからでは、後ろへ動かす場所が少なくなる
矯正治療では、歯を並べるためのスペースが必要です。
上の前歯が前に出ている場合、その前歯を後ろへ下げるためには、歯列のどこかにスペースを作らなければなりません。
成長が終わり、大人の歯がすべて生えそろった後では、上の奥歯のさらに後ろにも第二大臼歯や親知らずが存在します。
そのため、上の歯列全体を後ろへ移動できる量には限界があります。
前歯を後ろへ動かすための十分なスペースがない場合には、上の第一小臼歯、いわゆる4番を左右1本ずつ抜き、その空いた場所を利用して前歯を下げる方法が選択肢になります。
もちろん、大人の矯正では必ず歯を抜くという意味ではありません。
歯並びのガタつきの量、前歯の角度、口元の突出感、顎の大きさ、骨格、歯ぐきの状態などによって、抜歯が必要かどうかを判断します。
子どものうちなら、奥歯を後ろへ動かせる可能性がある
子どもの歯並びは、まだ完成していません。
第一大臼歯、いわゆる6歳臼歯の後ろに、第二大臼歯や親知らずがまだ生えていない時期であれば、上の第一大臼歯を後ろへ移動させられる可能性があります。
上の奥歯を後ろへ動かすことができれば、その手前にスペースができます。
そのスペースを使いながら、犬歯や小臼歯、前歯を順番に後ろへ移動させ、歯列全体の位置を整えていくのです。
成長途中の歯列や噛み合わせを管理する方法には、ヘッドギア、機能的矯正装置、固定式装置、抜歯など複数の選択肢があり、お子さんの骨格や歯の生え変わりに応じて選択されます。
このように、大人の歯が生えそろう前だからこそ選べる治療方法があります。
ただし、早く始めれば必ず歯を抜かずに済むわけではありません。
もともとの顎の大きさや歯の大きさ、成長方向、歯並びのガタつきが強い場合には、子どものうちから治療しても、最終的に抜歯が必要になることがあります。
早期治療は「非抜歯を保証する治療」ではなく、将来選べる治療方法を増やすための選択肢の一つです。
ヘッドギアとはどのような装置なのか
上の奥歯を後ろへ移動させるために使用することがあるのが「ヘッドギア」です。
診察室で装置の写真をお見せすると、
「これ、口の外に出るんですか?」
「『チャーリーとチョコレート工場』に出てきたような装置ですか?」
と驚かれることがあります。
ヘッドギアでは、まず上の第一大臼歯に「バンド」と呼ばれる金属製の輪を装着します。
バンドには、外側のワイヤーを差し込むための小さな管がついています。そこへフェイスボウと呼ばれるワイヤーを差し込み、口の外に出た部分を首や頭のストラップにつなぎます。
口の中だけで完結する装置ではないため、初めて見るとかなり大きな装置に感じると思います。
しかし、基本的には学校へつけていくのではなく、帰宅後や就寝時を中心に使用します。
必要な装着時間は、歯並びや装置の種類、治療目標によって異なります。決められた時間を守れないと十分な効果が得られないため、ご本人とご家族が無理なく続けられるかどうかも重要です。
首から引く装置と、頭の上から引く装置
ヘッドギアには、力をかける方向によっていくつかの種類があります。
代表的なものが、
・首の後ろから引くサービカルヘッドギア
・頭の上方から引くハイプルヘッドギア
です。
同じように上の奥歯へ装着するヘッドギアでも、力をかける方向によって、奥歯の動き方や噛み合わせへの影響が変わります。
サービカルヘッドギアは、上の奥歯を後方だけでなく、やや下方へ動かす作用も利用できます。
奥歯が少し下がることで、噛んだときに奥歯が先に接触し、深く噛み込んでいた前歯の噛み合わせを浅くできる場合があります。
そのため、上の歯列が前方にあり、さらに噛み合わせが深い過蓋咬合傾向の症例では、サービカルタイプが候補になることがあります。
一方、顔の下半分が長い方や、前歯が噛み合わない開咬傾向がある方では、奥歯を下方へ動かすことで噛み合わせが悪化する可能性があります。そのような場合には、上方から力をかけるハイプルタイプなど、別の方法を検討します。
ただし、ヘッドギアの垂直的な影響には個人差があり、装置の種類だけで結果が決まるものではありません。顎の成長方向や装着方法も含めた評価が必要です。
「どちらのヘッドギアを使いますか?」は精密検査後に決めます
診察中に、
「自分の場合は、首から引く方ですか?頭から引く方ですか?」
と聞かれることがあります。
お口の中を見た段階で、ある程度の予想を立てることはできます。
しかし、最終的な装置は精密検査を行わなければ決められません。
矯正の精密検査では、一般的に、
・お口と顔貌の写真
・上下の歯型や口腔内スキャン
・パノラマレントゲン
・横顔の骨格を確認するセファロレントゲン
・上下の顎の位置関係
・前歯や奥歯の傾き
・顎の成長方向
・永久歯の位置や生え変わり
などを確認します。
同じⅡ級、同じ過蓋咬合に見えても、上顎が前にあるのか、下顎が後ろにあるのか、歯だけが前に傾いているのかによって、治療計画は変わります。
ヘッドギアだけで矯正治療が終わるわけではありません
ヘッドギアは、歯をきれいに並べるための最終的な装置ではありません。
主な目的は、上の奥歯の位置を整えたり、前方への移動を抑えたりして、将来歯を並べるためのスペースを準備することです。
このような治療は「第一期治療」と呼ばれることがあります。
第一期治療で奥歯の位置や顎のバランスを整えた後、永久歯が生えそろった段階でワイヤー矯正やマウスピース矯正を行い、一本一本の歯をきれいに並べる「第二期治療」へ進みます。
そのため、
「ヘッドギアを使えば、後の矯正は必要ありません」
というわけではありません。
第一期治療と第二期治療を合わせると、治療期間が長くなることもあります。また、早期治療を行ったからといって、すべての患者さんで最終的な歯並びが大きく改善するとは限りません。
Ⅱ級の早期治療については、前歯が大きく出ているお子さんの外傷リスクを減らせる可能性が示されている一方、思春期から一度に治療した場合と比較して、最終的な噛み合わせに明確な差が出ないケースもあると報告されています。
だからこそ、すべてのお子さんに早期治療を勧めるのではなく、
「今始めることで、将来の治療が本当に変わるのか」
を考えることが大切です。
大切なのは、治療を急ぐことではなく「適切な時期を逃さないこと」
子どもの矯正には、成長期だからできることがあります。
一方で、まだ治療を始めず、歯の生え変わりを見守った方がよい場合もあります。
ヘッドギアを使用するかどうかも、
・上の奥歯を後ろへ動かす必要があるか
・動かすための場所が残っているか
・噛み合わせが深いか浅いか
・顎がどの方向へ成長しているか
・本人が装置を使用できるか
・将来どのような歯並びを目指すか
によって判断します。
子どものうちに治療を始める最大の目的は、単に早く歯を並べることではありません。
成長や歯の生え変わりを利用し、大人になったときに選べる治療方法をできるだけ残すことです。
「今すぐ始めるべきなのか」
「まだ待っても大丈夫なのか」
「将来、抜歯が必要になる可能性があるのか」
気になる場合は、永久歯がすべて生えそろう前に、一度矯正歯科医による診査を受けてみてください。
THE DENTALでは、一般歯科でお口全体の状態や歯の生え変わりを確認したうえで、必要に応じて矯正担当医による詳しい診察をご案内しています。
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