JOURNAL
メタルコアとは?金属の土台と、その除去について
皆さまこんにちは、THE DENTAL歯科助手の伊東です。
暑い日が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今回は、普段は被せ物の中に隠れていて患者さんからはほとんど見えない、**「メタルコア」**についてお話ししたいと思います。
被せ物を外した際に、
「中に金属の土台が入っていますね」と歯科医師から言われたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この金属製の土台が「メタルコア」です。
メタルコアは以前の歯科治療では非常によく使用されていたため、現在でも被せ物を外した際に見つかることは珍しくありません。
ただし、「以前の治療」「昔の治療」と聞くと、30年、40年前の治療を想像される方も多いと思います。
実は、メタルコアはそこまで大昔だけに使用されていた治療ではありません。
今回ご紹介する症例も20代の患者さんで、ご本人の記憶では10代、高校生くらいの時期に治療を受けたとのことでした。
つまり、比較的若い方でもメタルコアが入っているケースはあります。
今回は実際に当院でメタルコアを除去している途中の写真をご紹介しながら、メタルコアとはどのようなものなのか、なぜ使用されてきたのか、そして再治療の際に何を大切にしているのかについてご説明します。
そもそも「コア」とは?
大きな虫歯や根管治療によって歯の一部を大きく失ってしまった場合、そのままでは被せ物を装着するための十分な形が残っていないことがあります。
そこで、残っている歯を利用して内部に土台を作ります。
この**被せ物を支える土台が「コア」**です。
患者さんから見えるのは最終的なクラウンなどの被せ物ですが、その内側にはコアがあり、さらにその下にはご自身の歯や歯根があります。
簡単に表すと、
被せ物
↓
コア(土台)
↓
ご自身の歯・歯根という構造になっています。
普段はまったく見えない部分ですが、特に根管治療を行った歯では非常に重要な部分です。
「どのような被せ物を入れるか」だけではなく、
どれくらい健康な歯が残っているのか、どのような土台が入っているのか
まで考える必要があります。
メタルコアとは?
メタルコアとは、その名前の通り金属で作られた歯の土台です。
単純に歯の上に金属を載せているわけではなく、根管治療を行った歯では、根の中に一部を入れて土台を維持していることがあります。
この根の中に入る部分を「ポスト」と呼びます。
以前は、
根管治療をする
↓
メタルコアを装着する
↓
その上にクラウンを装着する
という流れが一般的に行われていました。
そのため、被せ物を外してみると、その下から大きな銀色の金属が出てくることがあります。
「昔の治療」といっても30〜40年前とは限りません
メタルコアについて説明すると、
「昔の治療なんですね」と言われることがあります。
しかし、「昔」という言葉だけでは少し誤解を生んでしまうかもしれません。
30年、40年前に治療した歯だけにメタルコアが使用されているわけではないからです。
今回ご紹介する患者さんも20代の方です。
ご本人のお話では、10代の頃、高校生くらいの時期に治療した記憶があるとのことでした。
つまり、何十年も前に治療された歯ではありません。
メタルコアは長い間、歯科治療における一般的な土台の一つとして使用されてきました。
そのため現在20代、30代の方でも、子どもの頃や学生時代に大きな虫歯の治療や根管治療を受けていれば、メタルコアが入っていることがあります。
「メタルコアが入っている=かなり昔に治療した歯」とは限らないということです。
なぜメタルコアが使われていたのでしょうか?
メタルコア自体が悪い治療だったわけではありません。
金属は強度が高く、歯を大きく失ってしまった場合でも比較的しっかりとした土台を作ることができます。
また、長年にわたって使用されてきた実績もあります。
実際に現在でも、メタルコアが入った状態で長期間問題なく使用できている歯はたくさんあります。
そのため、
「メタルコアが入っているから、すぐに外して交換した方がいい」というわけではありません。
痛みがなく、被せ物や根の状態にも問題がなく、きちんと機能しているのであれば、そのまま経過をみることもあります。
一方で、現在では材料や接着技術が進歩し、ファイバーコアなど金属を使用しない方法も広く使われるようになっています。
メタルコアの特徴は「非常に硬い」こと
メタルコアの大きな特徴の一つが、金属であるため非常に硬いということです。
「硬い方が丈夫でいいのでは?」と思われるかもしれません。
確かに土台そのものの強度だけを考えると、硬いことはメリットに感じます。
しかし、歯科治療では土台だけが壊れなければ良いわけではありません。
私たちが最も残したいのは、土台ではなく患者さんご自身の歯です。
天然の歯にはある程度しなる性質があります。
それに対して金属製のメタルコアは非常に硬いため、噛む力が加わった際に、その力が歯根へ伝わることがあります。
特に残っている歯質が少ない歯や、強い噛み合わせの力が加わる歯では、力のかかり方についても考える必要があります。
根管治療後の歯で避けたい「歯根破折」
根管治療を行った歯で特に避けたいトラブルの一つが、歯根破折です。
歯根破折とは、その名前の通り歯の根が割れてしまう状態です。
虫歯であれば、状態によっては悪くなった部分を除去して再治療できる可能性があります。
被せ物が壊れたのであれば、新しく作り直せる場合もあります。
しかし、歯を支えている根そのものが大きく割れてしまうと、歯を保存することが難しくなり、状態によっては抜歯が必要になります。
そのため根管治療後の歯では、
「絶対に壊れない硬い土台を作る」ことだけではなく、
「残っている自分の歯をどう守るか」という視点が非常に重要です。
実際にメタルコアを除去している途中の写真です
ここからは、実際の治療写真をご紹介します。
今回の患者さんは20代で、10代の頃に治療を受けた記憶があるとのことでした。
比較的若い方でも、このようにメタルコアが入っているケースがあります。
今回は再治療を行うため、既存のメタルコアを除去していきました。
【症例写真①:メタルコアを除去している途中】
被せ物を外した後、内部に入っている金属製のコアを少しずつ削っている途中です。
写真を見ると、歯の中央部分に大きな金属が残っていることが分かると思います。
メタルコアは非常に硬いため、一気に外そうとするのではなく、周囲に残っている歯質との境界を確認しながら少しずつ除去していきます。
ここで重要なのは、単純に
「金属を全部取ればいい」ということではありません。
【症例写真②:さらにメタルコアの除去を進めた状態】
こちらは、さらにメタルコアの除去を進めた状態です。
最初の写真と比較すると金属部分が減り、周囲に残っている歯質が確認しやすくなっています。
一方で、根の内部にはまだ金属の一部が残っています。
ここからも、周囲の歯をできるだけ傷つけないように慎重に除去を進めます。
このような治療で重要なのは、
「メタルコアを取ること」ではなく、
「自分の歯をできるだけ残しながらメタルコアを取ること」です。
削れば取りやすくなる。でも、それでは意味がありません
メタルコアの周囲にある歯を大きく削れば、金属を除去しやすくなる場合があります。
しかし、その方法ではメタルコアを外すために、本来残すことのできた患者さん自身の歯まで失ってしまいます。
特に根管治療を行っている歯は、虫歯や過去の治療によって、すでに多くの歯質を失っていることがあります。
さらに再治療を繰り返すたびに歯を削っていけば、当然ながら残っている歯質は少なくなっていきます。
だからこそ、再治療では、
「次に何を入れるか」と同じくらい、「今ある歯をどれだけ残せるか」が重要です。
被せ物は作り直すことができます。
土台も必要であれば、新しい材料で作り直すことができます。
しかし、一度削ってしまった天然の歯質を元に戻すことはできません。
そのため当院では、再治療の際にも必要以上に歯を削らず、残っている歯質を可能な限り保存することを大切にしています。
メタルコアを外した後はどうする?
メタルコアを除去した後は、歯の状態に応じて治療を進めます。
根の中に再び治療が必要な場合には、再根管治療を行います。
根管内の感染した部分を清掃・消毒し、再び細菌が侵入しにくい状態を作ったうえで、根管を封鎖していきます。
そして根管治療が終了した後に、新しい土台を作製し、その上から被せ物を装着します。
現在では、この新しい土台としてファイバーコアが使用されることが多くなっています。
ファイバーコアとは?
ファイバーコアは、グラスファイバーなどを利用して作る歯の土台です。
メタルコアとの違いの一つは、歯の象牙質に比較的近い弾性を持っていることです。
金属のように非常に硬い材料ではなく、ある程度しなる性質があります。
そのため、噛んだ際に加わる力を分散しやすいという特徴があります。
また、金属を使用しないため、審美的にもメリットがあります。
セラミックやジルコニアとの相性
前歯などで透明感のあるセラミックを使用する場合、その内側に大きなメタルコアが入っていると、金属の色が影響して歯全体が暗く見えることがあります。
特に歯肉が薄い方では、歯の根元付近が暗く見えることもあります。
ファイバーコアは白色系の材料であるため、セラミックやジルコニアなど、金属を使用しない被せ物とも組み合わせやすいという特徴があります。
ただし、
「ファイバーコアを使えば絶対に歯が割れない」というわけではありません。
一番大切なのは「どれだけ自分の歯が残っているか」
メタルコアとファイバーコアを比較すると、
「結局、ファイバーコアにすればいいんですよね?」と思われるかもしれません。
もちろん材料選択は重要です。
しかし、それ以上に大切なのが、健康な歯質がどれくらい残っているかです。
健康な歯が十分に残っている歯と、何度も治療を繰り返して歯質がほとんど残っていない歯では、同じ材料を使用しても条件は全く異なります。
だからこそ、今回の写真のようなメタルコアの除去でも、残っている歯質を可能な限り保存することを重視しています。
新しい材料に交換することだけが目的ではありません。
その歯をこれからも使っていくために、今残っている天然歯をどれだけ守れるか。
ここが非常に重要です。
メタルコアが入っていたら交換した方がいい?
メタルコアが入っているからといって、問題のない被せ物を外してまで交換する必要があるとは限りません。
痛みがない、被せ物にも問題がない、根の状態も安定しているのであれば、そのまま経過をみることもあります。
一方で、被せ物の下に虫歯がある、被せ物が外れた、根管治療をやり直す必要がある、被せ物自体を作り直す必要がある、歯根に問題が疑われるなど、再治療を行う理由がある場合には、そのタイミングでメタルコアを除去して土台から治療計画を見直すことがあります。
つまり、
「メタルコアだから外す」のではなく、
「その歯に再治療が必要だから、必要に応じてメタルコアも除去する」という考え方です。
被せ物だけではなく、その「中」も大切です
患者さんから見えるのは、治療後のクラウンなどの被せ物です。
そのため、
「白い歯にしたい」
「ジルコニアにしたい」
「保険の被せ物にしたい」といった、最終的な被せ物に目が向きやすいと思います。
もちろん被せ物の材料選びも大切です。
しかし、その下にはコアがあり、さらにご自身の歯があり、その内部には根管があります。
どれだけきれいな被せ物を入れても、内部に問題が残っていれば再治療が必要になる可能性があります。
特に一度治療した歯をやり直す場合には、
「何を被せるか」だけではなく、「被せ物の下がどうなっているのか」まで確認することが大切です。
まとめ
メタルコアは、長い間歯科治療で使用されてきた金属製の土台です。
「昔の治療」というイメージを持たれることがありますが、30年、40年前だけに使われていたものではありません。
今回の症例のように、現在20代の患者さんでも、10代の頃に治療した歯にメタルコアが入っていることがあります。
そのため、メタルコアがあるからといって「ものすごく古い治療」というわけではありません。
また、メタルコアが入っていること自体を理由に、すべて除去する必要もありません。
問題なく機能しているのであれば、そのまま使用できる場合もあります。
一方で、虫歯や根管治療の再発などによって再治療が必要になった場合には、メタルコアを除去することがあります。
その際に大切なのは、金属を取ることを優先して周囲の歯を必要以上に削らないことです。
今回ご紹介した症例写真のように、周囲の歯質を確認しながらメタルコアを少しずつ除去していきます。
人工物は交換できますが、天然の歯は一度削ってしまえば元には戻りません。
新しい材料を使用することももちろん大切ですが、それ以上に、
「今残っている自分の歯をできるだけ残すこと」が重要だと考えています。
THE DENTALでは、被せ物の見た目だけではなく、その下にある土台や残っている歯質、さらに根の状態まで確認しながら、できる限りご自身の歯を長く残すことを考えて治療を行っています。
昔治療した被せ物が気になる、メタルコアが入っていると言われた、根管治療をした歯の再治療が必要と言われたという方も、お気軽にご相談ください。
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