JOURNAL
「差し歯」と「入れ歯」は何が違う?よくある勘違いをわかりやすく解説
こんにちは。
池尻大橋の歯科医院「THE DENTAL」歯科衛生士の廣島です。
患者さんとお話ししていると、意外とよくあるのが**「差し歯」と「入れ歯」の混同**です。
「前に入れ歯にしたところが取れてしまって……」
とお話を聞いて、実際にお口の中を確認すると、入れ歯ではなく差し歯だった、ということもあります。
反対に、
「差し歯を作りたいです」
とご相談いただき、詳しく確認すると歯そのものが抜けていて、差し歯では治療できないケースもあります。
名前が似ているわけではありませんが、どちらも「人工の歯」というイメージがあるため、一般の方にとっては少し分かりにくいのかもしれません。
しかし、差し歯と入れ歯はまったく別の治療です。
今回は、この2つの違いをできるだけ分かりやすく説明します。
一番大きな違いは「自分の歯の根が残っているか」
まず、これだけ覚えていただければ大丈夫です。
差し歯=自分の歯の根が残っている
入れ歯=歯を失った場所に入れる取り外し式の人工歯
これが大きな違いです。
差し歯は、自分の歯をすべて失った場所に新しく歯を差し込んでいるわけではありません。
歯の根が残っていて、その根を利用して人工の歯を作っています。
一方、入れ歯は歯そのものを失った場所を補う治療です。
つまり、
「歯が残っているのか」
「歯がなくなっているのか」
というところから、そもそも治療方法が違います。
「差し歯」は本当に歯ぐきに差しているわけではありません
「差し歯」という言葉から、
「人工の歯を歯ぐきや骨に差し込んでいる」
と思っている方もいらっしゃいます。
しかし、これは違います。
一般的に「差し歯」と呼ばれているものは、歯科では**被せ物(クラウン)**と呼ばれる治療の一種です。
虫歯や外傷などによって歯の大部分を失ってしまっても、歯の根が残せる場合があります。
特に神経の治療を行った歯では、残っている歯の根に土台を作り、その上からクラウンを被せることがあります。
イメージとしては、
歯の根
↓
土台(コア)
↓
被せ物(クラウン)
という構造です。
昔は金属の土台が使われることも多く、土台と被せ物が一体化した構造も多かったため、「差し歯」という呼び方が広まりました。
現在ではファイバーコアなどを使用し、土台と被せ物をそれぞれ作る方法も一般的です。
そのため、歯科医療では「差し歯」というより、**「被せ物」「クラウン」**と表現することが多くなっています。
差し歯は自分では取り外せません
もう一つ、非常に分かりやすい違いがあります。
差し歯は基本的に自分では取り外せません。
歯科用のセメントなどで歯に固定されているため、ご自身の歯と同じように毎日使用します。
食事のたびに外したり、寝る前に外したりするものではありません。
一方、一般的な入れ歯は患者さん自身で取り外すことができます。
この違いを覚えておくと、かなり分かりやすいと思います。
「自分では外せない人工の歯」なら差し歯や被せ物の可能性が高く、
「自分で取り外して洗えるもの」なら入れ歯です。
では「入れ歯」とは?
入れ歯は、歯を失った部分を補うための取り外し式の装置です。
専門的には「義歯」と呼びます。
1本だけ歯を失った場合にも使用できますし、複数本の歯を失った場合にも使用できます。
一部の歯を補うものを部分入れ歯、すべての歯を失った場合に使用するものを総入れ歯といいます。
部分入れ歯では、残っている歯に金具などをかけて安定させる構造が一般的です。
総入れ歯では、歯ぐきや顎の形などを利用して入れ歯を支えます。
つまり入れ歯の場合、人工の歯だけではなく、歯ぐきに相当する部分なども含めて一つの装置になっています。
歯が抜けたところに「差し歯」はできません
ここは特に勘違いされやすいところです。
患者さんから、
「この歯が抜けてしまったので、ここに差し歯を入れたいです」
とご相談いただくことがあります。
しかし、歯の根まで完全になくなっている場所には、基本的に差し歯はできません。
差し歯は、残っている自分の歯の根を利用する治療だからです。
歯を根ごと失った場合には、別の方法で歯を補う必要があります。
代表的なのが、
- 入れ歯
- ブリッジ
- インプラント
です。
どの方法が適しているかは、失った歯の本数や場所、周囲の歯、骨の状態、噛み合わせなどによって異なります。
インプラントは差し歯?入れ歯?
ここでもう一つ、よく混同されるのがインプラントです。
見た目だけを見ると、インプラントは差し歯に近く見えるかもしれません。
しかし、インプラントも差し歯とは異なります。
差し歯は自分の歯の根を利用します。
インプラントは、自分の歯の根がなくなった部分の顎の骨に**人工歯根(インプラント体)**を埋め込み、その上に人工の歯を装着します。
簡単に整理すると、
差し歯
→ 自分の歯根を使う
入れ歯
→ 歯を失った部分を取り外し式の装置で補う
インプラント
→ 歯を失った部分に人工歯根を入れて補う
という違いがあります。
「差し歯が取れた」ときは根の状態が重要です
差し歯についてもう一つ知っておいていただきたいのが、取れてしまったときの対応です。
「差し歯が取れたから、もう一度つければ終わり」
と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
取れた原因が、
- 接着していたセメントの劣化
- 被せ物の破損
- 土台の問題
- 内部の虫歯
- 歯の根の破折
などの場合があるからです。
特に重要なのが、残っている歯の根を今後も使用できるかどうかです。
歯の根が健康で、土台や被せ物を作り直せる状態であれば、再び被せ物を作れる可能性があります。
しかし、虫歯が根の深い部分まで進んでいたり、歯根が大きく割れていたりすると、残念ながら抜歯が必要になることもあります。
その場合には、差し歯ではなく、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどを検討することになります。
入れ歯も「作ったら終わり」ではありません
入れ歯についても、作った後のメンテナンスが大切です。
歯ぐきや顎の骨の形は、年月とともに少しずつ変化します。
そのため、以前は問題なく使用できていた入れ歯でも、
「最近動くようになった」
「噛むと痛い」
「食べ物が入る」
「外れやすくなった」
といった変化が起こることがあります。
また、部分入れ歯の場合は、入れ歯を支えている残りの歯を守ることが非常に重要です。
残っている歯が虫歯や歯周病になってしまうと、入れ歯そのものの設計を変更しなければならなくなる場合もあります。
名前を正確に覚えていなくても大丈夫です
ここまで差し歯と入れ歯の違いを説明してきましたが、歯科医院を受診するときに、無理に正しい専門用語を使う必要はありません。
実際には、
「昔ここに何か入れたけれど、何だったか分からない」
「差し歯なのか被せ物なのか分からない」
「入れ歯だと思っていたけれど違うかもしれない」
という方もたくさんいらっしゃいます。
私たちが実際にお口の中を確認すれば、多くの場合は分かります。
昔の治療について覚えていなくても、気にせずご相談ください。
まとめると、とてもシンプルです
最後にもう一度整理してみましょう。
差し歯は「自分の歯の根を利用して、その上に人工の歯を固定する治療」。
入れ歯は「歯を失った部分を、取り外し式の人工の歯で補う治療」。
そして、歯を根ごと失ってしまった場合には、差し歯を入れることはできず、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどから治療方法を検討します。
似たように「人工の歯」に見えても、実際の構造や治療方法は大きく異なります。
ご自身のお口の中に入っているものが、
「これは差し歯?」
「被せ物?」
「入れ歯?」
「昔の治療だからよく分からない」
という場合も、定期検診の際などにお気軽にお尋ねください。
THE DENTALでは、現在入っている被せ物や入れ歯の状態だけでなく、その下にある歯や歯ぐき、噛み合わせまで確認しながら、必要な治療やメンテナンスをご提案しています。
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