2026.08.21 診療コラム

症状がなくても「根の先に影」が見えることがあります|すぐ治療せず経過を見る理由

こんにちは。池尻大橋の歯科医院 THE DENTALです。

歯科検診でレントゲンを撮った際、

「今は痛くないのですが、少し気になる影があります」

と説明を受けた経験がある方もいらっしゃると思います。

患者さんからすると、

「影があるなら、すぐ治療した方がいいのでは?」

と思うかもしれません。

しかし歯科治療では、異常らしきものが見つかったからといって、すべてをすぐに削ったり、根の治療をしたりするわけではありません。

今回は、実際の診察で見られた「以前治療した歯」「神経に近いところまで虫歯が進んでいた歯」「根の先に少し気になる影がある歯」を例に、当院がどのように治療の必要性を判断しているのかをご紹介します。

大きな虫歯はなく、全体としては比較的安定した状態

今回の患者さんは、お口全体を確認したところ、すぐに治療しなければならないような大きな虫歯は見当たりませんでした。

過去に治療した歯や詰め物は複数ありますが、全体としては比較的安定しています。

こうした場合、当院では過去に治療した歯を片っ端からやり直すようなことは基本的にしません。

詰め物が入っているから治療する。

少し黒く見えるから削る。

レントゲンにわずかな変化があるから根管治療をする。

というように単純には判断できないからです。

「治療すること」そのものが歯にとって負担になることもあります。

今の状態で問題なく使えているのであれば、あえて触らず、定期的に確認していくことが最も歯を長く残せる選択になることもあります。

神経ギリギリまで虫歯が深かった左上の奥歯

左上の奥歯には、以前かなり深い虫歯を治療した跡がありました。

レントゲンを見ると、虫歯がもともと非常に深く、歯の内部にある神経の近くまで達していたことが分かります。

歯の神経が入っている部分を「歯髄」と呼びます。

その中でも角のように伸びた部分を「髄角」と呼びますが、今回の歯では過去の虫歯がこの髄角にかなり近いところまで達していました。

このようなケースでは、虫歯を除去した時点で神経を取ってしまう方法もあります。

一方、神経がまだ保存できると判断できる場合には、神経をできる限り残すための処置を行うことがあります。

今回も神経を保護するための材料が使用され、その後長期間にわたって大きな症状なく経過していました。

深い虫歯を治療した歯は、あとから神経に症状が出ることも

神経を残すことができたからといって、その歯が将来にわたって100%問題を起こさないというわけではありません。

もともとの虫歯が非常に深かった場合、

  • 噛んだり叩いたりすると痛い
  • 冷たいものや温かいものへの反応が強くなる
  • 何もしていないのに痛む
  • 夜間にズキズキする
  • 歯ぐきが腫れる

といった症状が後から出ることがあります。

このような症状が現れた場合には、神経の状態を改めて確認し、必要に応じて根管治療を検討します。

ただし今回の歯は、治療からかなりの期間が経過しているにもかかわらず、大きな症状なく使用できています。

そのため現時点では、わざわざ歯を削って神経の治療を始めるメリットは少ないと判断しました。

「深い治療をした歯だから、とりあえず根の治療をしておきましょう」

という考え方ではなく、現在の症状とこれまでの経過を含めて判断することが重要です。

少し黒く見える場所も、すべて削るわけではありません

左下にも、少し黒く見える部分がありました。

見た目だけで考えると、

「虫歯だから削った方がいいのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、ここも現時点で積極的に治療する必要性は低いと判断しています。

虫歯の診断では、

黒い=必ず削る

ではありません。

色だけではなく、虫歯の深さ、広がり、硬さ、レントゲン所見、過去との比較、患者さんの虫歯リスクなどを総合して判断します。

特に進行している様子がなく、治療によって健康な歯質を大きく失う可能性がある場合には、定期的なメンテナンスを行いながら経過観察することがあります。

一番気になったのは右上6番の「根の先の影」

今回、お口全体を確認した中で少し気になったのが右上6番です。

この歯は過去に根管治療が行われていました。

通常のレントゲンで確認すると、根の先の周囲に少し影のように見える部分があります。

根管治療を行った歯では、時間が経過してから根の中で細菌感染が再発し、根の先に炎症が起こることがあります。

いわゆる根尖病変です。

ただし、今回の段階では、

「影があるように見える=根管治療の再発が確定」

ではありません。

通常の二次元レントゲンでは、歯や骨などさまざまな組織が重なって写ります。

そのため、少し怪しく見える部分があったとしても、それだけですぐに再根管治療を開始するのは早い場合があります。

次回はCTでより詳しく確認します

そこで右上6番については、今後歯科用CTを撮影して詳しく確認する予定としました。

CTでは通常のレントゲンとは異なり、歯や周囲の骨を三次元的に確認できます。

根の先に病変があるのか、どの程度の大きさなのか、どの根の周囲に変化があるのかなどを、より詳しく評価することができます。

その結果によって、

そのまま経過観察するのか、再根管治療を行うのか、根管治療を専門的に行う歯科医師へ紹介するのか

を判断していきます。

特に症状がなく、病変らしきものも小さい場合には、すぐ治療せず期間を空けて再度撮影し、変化を比較することもあります。

以前と比較して大きくなっているのであれば「進行性の可能性がある」と判断できますし、長期間ほとんど変化していなければ経過観察できるケースもあります。

「何もしない」ことも歯科治療の選択肢です

歯科医院に行くと、

「何か見つかったら治療される」

というイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし当院では、治療することと同じくらい、治療しないという判断も大切だと考えています。

一度削った歯は元には戻りません。

根管治療を始めれば、歯の神経を元に戻すこともできません。

だからこそ、

「少し怪しいから治療」

ではなく、

「今、本当に介入するメリットがあるのか」

を考える必要があります。

もちろん、明らかに進行している虫歯や感染が確認できれば治療をご提案します。

一方で、長期間安定しているものについては、写真やレントゲン、CTなどの記録を残しながら経過を見ることも立派な診療の一つです。

今回は「治療」より「予防」が大切

今回の患者さんについては、大きな虫歯は認められなかったため、現時点では積極的に歯を削る治療よりも、定期的なクリーニングや歯周病予防を続けることの方が重要と考えています。

また、全体的に歯のすり減りや詰め物の経年的な劣化も認められました。

さらに前歯にはガタつきがあり、噛み合わせによる力が前歯・奥歯にバランスよく分散されにくい状態も見られました。

こうした場合には虫歯だけを見るのではなく、

歯周病、噛み合わせ、歯並び、歯ぎしりや食いしばり、過去に治療した歯の状態

まで含めて長期的に管理していくことが大切です。

歯並びや噛み合わせの状態によっては、将来的な歯への負担を考え、矯正治療を選択肢としてご説明することもあります。

まとめ

今回のように、検診では「今すぐ治療するほどではないけれど、少し気になる」という歯が見つかることがあります。

特に過去に大きな虫歯を治療した歯や、根管治療を行った歯は、現在症状がなくても定期的な確認が重要です。

大切なのは、

「影があるからすぐ治療する」のでも、「痛くないから放置する」のでもなく、必要な検査を行い、過去の画像と比較しながら適切なタイミングを判断することです。

今回の右上6番についても、次回以降CTで詳しく確認し、必要であれば根管治療を専門的に行う歯科医師へのご紹介も検討します。

反対に、長期間安定している歯については、無理に触らず経過を追うこともあります。

THE DENTALでは、虫歯を見つけて削るだけではなく、できるだけ今ある歯を長く残すために「治療する歯」と「経過を見る歯」を見極めることを大切にしています。

気になる症状がなくても、過去に大きな虫歯や根管治療をした歯がある方は、定期的なレントゲン撮影やメンテナンスで状態を確認していきましょう。

池尻大橋|一般歯科・小児歯科・矯正歯科・口腔外科|THE DENTAL

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