2026.08.22 診療コラム

見た目の歯並びは悪くないのに噛み合わせが悪い?「オープンバイト」と奥歯への負担

こんにちは。池尻大橋の歯科医院 THE DENTALです。

今回は、

「左の奥歯で硬いものを噛むと、なんとなく違和感や痛みがある」

という患者さんのお話です。

虫歯があるのか、被せ物に問題があるのかと思って詳しく確認してみましたが、明らかな虫歯や「この歯が原因です」と断定できる異常は見つかりませんでした。

では、なぜ奥歯に違和感が出るのでしょうか。

今回注目したのは、虫歯ではなく噛み合わせでした。

一見するとそれほど歯並びが悪いようには見えません。

ところが実際に噛み合わせを確認すると、前歯がしっかり噛み合っていない**「オープンバイト(開咬)」**の状態になっていました。

今回は、見た目だけでは気づきにくいオープンバイトと、奥歯への負担についてご紹介します。

「グミを噛むと左の奥歯が痛い」

今回の患者さんは、普段からずっと強い痛みがあるわけではありません。

特に気になるのが、グミなどの少し硬く、弾力のあるものを噛んだとき。

左側の奥歯に違和感や軽い痛みを感じることがあるとのことでした。

こういった症状があると、まず疑いたくなるのは虫歯です。

そのほかにも、

  • 詰め物や被せ物が高い
  • 神経に炎症がある
  • 根の先に炎症がある
  • 歯周病が進行している
  • 歯にヒビが入っている

など、さまざまな可能性があります。

ところが今回、複数の歯を叩いて反応を確認しても、特定の1本だけ明らかに痛いという状態ではありませんでした。

また、詰め物や被せ物をした歯だけが強く当たっているわけでもありません。

そこでお口全体の噛み合わせを確認してみると、別の問題が見えてきました。

前歯が噛んでいない「オープンバイト」

患者さんに普段通り噛んでいただくと、一見それほど悪い噛み合わせには見えません。

歯並びも極端にガタガタしているわけではありません。

しかし横から細かく確認すると、上下の前歯がしっかり接触していませんでした。

この状態を**オープンバイト(開咬)**と呼びます。

本来、上下の歯を噛み合わせたときには、前歯から奥歯までそれぞれの歯が役割を持って噛む力を受け止めています。

ところがオープンバイトでは、前歯が噛み合わず、奥歯を中心に噛んでいる状態になります。

つまり、

本来はお口全体で分散するはずの力が、限られた奥歯に集中しやすくなる

ということです。

今回の奥歯の違和感についても、この噛み合わせによる負担が一つの原因として考えられました。

奥歯しか噛んでいないと何が起こる?

歯は非常に硬い組織ですが、どれだけ強い力がかかっても問題ないわけではありません。

食事のたびに何度も噛みます。

さらに歯ぎしりや食いしばりがあれば、睡眠中にも大きな力が加わります。

正常な噛み合わせであれば、その力を複数の歯で分散できます。

しかしオープンバイトでは、前歯が十分に噛み合わせに参加できません。

その分、奥歯が受け持つ仕事が増えます。

若いうちは、それでも特に問題なく過ごせることがあります。

ところが、それが5年、10年、20年と続けばどうでしょうか。

長期間にわたり奥歯へ負担が集中することで、

歯のすり減り、違和感、痛み、歯の動揺、詰め物や被せ物のトラブル、歯のヒビや破折

などにつながる可能性があります。

さらに歯周病がある場合には、噛む力による負担が加わることで、歯を支える組織にとってより厳しい環境になることがあります。

「痛い歯」だけ治療しても解決しないことがあります

今回のようなケースで非常に重要なのが、

痛い場所と、問題の原因が必ずしも同じではない

ということです。

「左の奥歯が痛い」

と言われれば、その歯を削ったり、被せ物を調整したりすれば治りそうに感じます。

しかし、噛み合わせ全体に原因がある場合、左側を治療しても根本的な力のかかり方は変わりません。

一時的に左側が落ち着いたとしても、今度は右側に違和感が出る可能性もあります。

そのため当院では、

「痛いと言われた歯をとりあえず削る」

のではなく、その歯に本当に原因があるのかを確認することを大切にしています。

歯に小さなヒビが入っている可能性も

奥歯に強い力が長期間加わっている場合、もう一つ考える必要があるのが**歯のヒビ(クラック)**です。

歯に細かなヒビが入っていると、普段は何ともないのに、硬いものを噛んだ瞬間だけ痛みを感じることがあります。

噛む力によってヒビがわずかに開くことで、症状が出るためです。

ただし、こうした細かなヒビは非常に診断が難しいことがあります。

明らかに歯が割れていれば確認できますが、初期の細かなクラックはレントゲンやCTでも確認できない場合があります。

だからといって、

「ヒビかもしれないので、とりあえず神経を取りましょう」

とすぐに治療するのも適切ではありません。

神経を取れば元には戻せませんし、歯を大きく削ることになります。

今回についても、現時点ではそこまで積極的な処置をする必要はないと判断しました。

症状の変化を確認しながら経過を見ることにしています。

見た目がきれいでも「良い噛み合わせ」とは限りません

オープンバイトの難しいところがここです。

今回の患者さんも、ぱっと見ただけでは極端に歯並びが悪いわけではありません。

前歯が大きくガタガタしているわけでもありません。

そのため、ご本人も「自分は噛み合わせが悪い」という認識を持ちにくい状態でした。

しかし歯科医師が実際に噛み合わせを確認すると、

「前歯がほとんど噛み合わせに参加していない」

ということがあります。

歯並びがきれいに見えることと、上下の歯が機能的に噛み合っていることは、必ずしも同じではありません。

これが、見た目だけでは判断できない噛み合わせの難しさです。

今困っていなくても、将来の奥歯を考える

「今そこまで痛くないなら、別にいいのでは?」

と思う方もいるでしょう。

もちろん、オープンバイトだから必ず将来歯を失うということではありません。

ただ、歯を長期間残すことを考えると、どの歯にどの程度の力が加わっているのかは無視できません。

特に若い方の場合、現在は奥歯がその力に耐えられていても、それが何十年も続くことを考える必要があります。

当院が噛み合わせを見るときも、

「今痛いかどうか」

だけではなく、

「この噛み合わせのまま10年、20年と使ったときにどうなるか」

という視点で考えます。

根本的に改善するなら矯正治療

オープンバイトそのものを改善する方法として、まず検討されるのが矯正治療です。

矯正というと、

「ガタガタの歯をきれいに並べるもの」

というイメージが強いかもしれません。

しかし矯正治療の目的は見た目だけではありません。

上下の歯を適切に噛み合わせ、特定の歯だけに負担が集中しにくい状態をつくることも重要な目的です。

前歯も含めて噛み合わせに参加できるようになれば、奥歯だけで噛む現在の状態と比較して、力を分散しやすくなります。

結果として、現在感じている奥歯の違和感の軽減や、将来的な奥歯への負担を減らすことが期待できます。

オープンバイトはマウスピース矯正が適応になることも

「矯正=必ずワイヤーを付ける」

と思われている方も多いですが、現在は症例によってマウスピース型矯正装置を使用できることもあります。

特に今回のように、見た目として大きなガタつきはないものの、前歯が噛み合っていないケースでは、まず矯正医による診断を受けてみる価値があります。

もちろん、すべてのオープンバイトがマウスピース矯正だけで治療できるわけではありません。

骨格や舌の癖、歯の位置、開咬の程度などによって治療方法は変わります。

そのため、

「ワイヤーが必要なのか」
「マウスピースで可能なのか」
「どの程度の期間が必要なのか」

を診断したうえで判断します。

相談したからといって、必ず矯正治療を始めなければならないわけではありません。

まず自分の噛み合わせがどのような状態なのかを知るだけでも意味があります。

矯正をしない場合はどうする?

もちろん矯正治療には期間も費用もかかります。

見た目に大きなコンプレックスがない方ほど、

「そこまでして矯正する必要があるのかな?」

と悩まれると思います。

その場合には、症状や噛む力の強さなどに応じて、マウスピースタイプの装置で歯への負担を軽減する方法を検討することもあります。

ただし、これはオープンバイトそのものを治しているわけではありません。

あくまで歯を強い力から守るための対症的な方法です。

そのため、

根本的に噛み合わせを改善する矯正治療と、現在の歯を保護するためのマウスピースでは目的が異なります。

どちらが適しているかは、患者さんの年齢や症状、希望、生活スタイルなども含めて考えていきます。

「原因が分からない奥歯の違和感」は噛み合わせも確認します

奥歯が痛いからといって、必ず虫歯があるわけではありません。

特に、

  • 硬いものを噛んだときだけ痛い
  • 痛む場所がはっきりしない
  • 左右で症状が変わる
  • レントゲンでは大きな問題がない
  • 虫歯も見つからない
  • 被せ物の高さにも問題がない
  • 痛くなったり治ったりを繰り返す

という場合には、噛み合わせや歯ぎしり・食いしばりなども含めて考える必要があります。

そして今回のように、実は前歯が噛んでおらず、奥歯だけに負担が集中していたということもあります。

まとめ

今回の患者さんは、見た目だけを見るとそれほど歯並びが悪いようには見えませんでした。

しかし実際に噛み合わせを確認すると、上下の前歯が十分に接触していないオープンバイトの状態でした。

そのため奥歯に噛む力が集中し、硬いものを食べたときの違和感につながっている可能性があります。

今すぐ歯を削ったり神経を取ったりするのではなく、まずは症状の経過を見る。

そして長期的には、矯正治療によって噛み合わせそのものを改善することも選択肢になります。

歯並びがきれいに見えることと、噛み合わせが良いことは同じではありません。

THE DENTALでは、痛みのある1本だけを見るのではなく、歯並びや噛み合わせ、歯に加わる力まで含めて、お口全体を確認することを大切にしています。

「虫歯はないと言われたのに奥歯が痛い」
「硬いものを噛んだときだけ違和感がある」
「自分の噛み合わせが良いのか分からない」

という方は、一度噛み合わせまで含めて確認してみることをおすすめします。

池尻大橋|一般歯科・小児歯科・矯正歯科・口腔外科|THE DENTAL

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