2026.09.12 診療コラム

痛みがなくても治療が必要?レントゲンに写る「怪しい影」と経過観察という選択

こんにちは。池尻大橋にある歯科医院、THE DENTALです。

歯科医院を受診した際に、レントゲン写真を見ながら、

「ここに少し黒い影があります」
「以前治療した歯の根の先が少し気になります」

と説明を受けたことがある方もいらっしゃると思います。

そのように言われると、

「虫歯が再発しているのでは?」
「すぐに治療しないと悪くなるのでは?」
「痛くないのに神経を取るのですか?」

と不安になってしまうかもしれません。

しかし、レントゲン写真に少し気になる部分が見つかったからといって、必ずしもすぐに治療が必要とは限りません。

今回は、以前大きな虫歯の治療を受けた歯や、根の先にわずかな影が見られた歯について、「治療するべきか」「経過を確認するべきか」をどのように判断しているのかお話しします。

痛みのある場所と、問題がある場所が一致するとは限りません

先日、初めて当院を受診された患者さんから、

「左上の奥歯を噛んだときに、少し痛いような気がします」

というお話がありました。

まずは、どの歯に症状があるのかを確認するため、歯を一本ずつ触ったり、軽く叩いたりしながら反応を調べます。

歯の痛みは、患者さんご自身でも場所を特定しにくいことがあります。

例えば、左上の歯が痛いように感じていても、実際には隣の歯が原因であったり、噛み合わせによる負担が原因であったりすることがあります。

また、レントゲン上で気になる部分が見つかっても、その歯が現在の症状の原因とは限りません。

そのため、歯科診療では、

・患者さんが感じている症状
・歯を叩いたときの反応
・噛んだときの痛み
・冷たいものや温かいものへの反応
・歯ぐきの腫れ
・レントゲン写真
・過去の治療内容

などを組み合わせて判断します。

レントゲン写真だけを見て治療を決めるのではなく、実際の症状や経過を含めて考えることが重要です。

大きな虫歯の治療後は、神経に近い部分を保護していることがあります

今回確認した歯の一つには、過去に非常に深い虫歯を治療した跡がありました。

レントゲン写真を見ると、詰め物の下に半月状の白い材料が確認できました。

これは、虫歯が歯の神経に非常に近いところまで進んでいたため、神経を保護する目的で入れられた薬剤やセメントと考えられます。

歯の内部には、神経や血管が入っている「歯髄」という組織があります。

歯髄の上部には「髄角」と呼ばれる角のような部分があり、深い虫歯では、この髄角のすぐ近くまで虫歯が到達していることがあります。

虫歯をすべて削ると神経が露出する可能性がある場合には、神経への刺激を抑える材料を入れ、その上から詰め物をすることがあります。

うまく安定すれば、神経を取らずに歯を長く使える可能性があります。

一方で、治療直後は問題がなくても、時間が経ってから神経に炎症が起こることもあります。

その場合には、

・何もしていなくてもズキズキ痛む
・夜眠れないほど痛む
・温かいものが強くしみる
・噛んだときに痛む
・歯を叩くと響く
・歯ぐきが腫れる

といった症状が現れることがあります。

このような症状が強くなった場合には、神経の治療や根の治療が必要になる可能性があります。

長期間症状がない歯は、あえて触らない方がよいこともあります

今回の歯は、治療してからある程度の年月が経過していました。

その間、強い痛みや腫れがなく、状態が大きく変化していないのであれば、すぐに詰め物を外す必要はないと判断することがあります。

歯科治療では、問題が起きる可能性を心配して、古い詰め物をすべて外せばよいというわけではありません。

詰め物を外す際には、どうしても周囲の歯を削る可能性があります。

さらに、神経に非常に近い歯では、詰め物を外した刺激によって神経の症状が出ることもあります。

現在安定している歯に対して治療を行うことで、かえって神経の治療が必要になる可能性もゼロではありません。

そのため、

「以前の治療跡がある」
「詰め物が古い」
「レントゲンで少し気になる」

という理由だけで治療するのではなく、現在の症状や変化を確認しながら判断します。

治療しないことは、放置することではありません。

状態を記録し、定期的に確認する「経過観察」も、歯を守るための大切な選択肢です。

レントゲンに黒い影があっても、すぐ治療とは限りません

今回、別の奥歯の根の付近にも、少し気になる黒い影が確認されました。

過去に根の治療を受けた歯では、根の先に炎症が起きると、レントゲン写真上で黒い影として見えることがあります。

これは、根の中に残った細菌や、根の先への刺激によって、周囲の骨に変化が起きている可能性を示します。

ただし、通常のレントゲン写真は立体的な構造を一枚の平面に重ねて写しています。

そのため、

・骨の形
・上顎洞の重なり
・歯根の向き
・撮影角度
・過去の炎症の跡

などによって、病変のように見える場合もあります。

一枚のレントゲンだけでは、現在進行している炎症なのか、過去の変化が残っているだけなのか判断が難しいことがあります。

そのような場合には、すぐに根の治療をやり直すのではなく、期間を空けて再度レントゲンを撮影し、影の大きさや形が変化しているかを比較します。

影が大きくなっていれば、進行している可能性があります。

一方、長期間ほとんど変化がなく、痛みや腫れもなければ、定期的な確認で対応できる場合もあります。

CTで確認すると、通常のレントゲンでは分からないことが見える場合があります

通常のレントゲン写真で判断が難しい場合には、歯科用CTを撮影することがあります。

CTでは、歯や顎の骨を立体的に確認できます。

そのため、

・根の先に病変があるか
・どの根に問題があるか
・病変の大きさや広がり
・根の形や本数
・過去の根管治療の状態
・周囲の骨や上顎洞との位置関係

などを、通常のレントゲンより詳しく確認できる場合があります。

ただし、気になる影があるからといって、すべての患者さんにその日のうちにCTを撮影するわけではありません。

症状がなく、緊急性が低いと判断した場合には、次回のメインテナンス時などに撮影し、過去のレントゲンと比較することもあります。

CTの結果、

・病変が小さく変化もない
・痛みや腫れがない
・治療の負担が大きい
・現時点ではメリットが少ない

と判断した場合には、引き続き経過を確認することがあります。

反対に、病変が大きい場合や、症状を繰り返している場合には、根管治療を専門に行う歯科医師へご紹介することもあります。

古い詰め物の摩耗や劣化も確認します

今回の診察では、大きな虫歯は見つかりませんでしたが、以前治療した白い詰め物の一部に、摩耗や劣化が確認されました。

白い詰め物に使用されるコンポジットレジンは、歯の色に合わせやすく、必要な部分だけを削って治療できる材料です。

一方で、長期間使用すると、

・表面がすり減る
・細かな亀裂が入る
・歯との境目が着色する
・一部が欠ける
・噛み合わせの形が平らになる

といった変化が起こることがあります。

ただし、摩耗しているからといって、必ずすぐにやり直す必要があるわけではありません。

詰め物の下に虫歯がなく、欠けや段差も小さく、清掃に問題がなければ、経過を確認できる場合があります。

古い詰め物を見つけたときに大切なのは、「何年前に治療したか」だけではありません。

現在、その歯にどのような問題が起きているかを評価することが重要です。

治療よりも予防を優先する時期があります

今回のお口の中には、すぐに大きく削らなければならない虫歯は見つかりませんでした。

そのため、現時点では積極的な治療よりも、

・歯石や着色の除去
・歯周病の検査
・歯ブラシやフロスの確認
・詰め物の境目のチェック
・噛み合わせの確認
・定期的なレントゲン撮影

などを行いながら、状態を維持していくことが大切だと考えました。

歯科医院は、虫歯を削るためだけに通う場所ではありません。

治療が必要になる前に変化を見つけ、できるだけ歯を削らずに済むよう管理することも、定期的なメインテナンスの大きな目的です。

歯並びや噛み合わせが、奥歯への負担につながることもあります

今回の診察では、前歯に少しガタつきがあり、奥歯と前歯にかかる力が均等ではない可能性も確認されました。

歯並びや噛み合わせに偏りがあると、一部の奥歯に強い力が集中することがあります。

その結果、

・詰め物がすり減る
・詰め物が欠ける
・歯にひびが入る
・噛んだときに違和感が出る
・歯周組織へ負担がかかる

といった問題につながる場合があります。

歯並びが悪いから必ず矯正が必要ということではありません。

しかし、虫歯や歯周病だけでなく、歯にかかる力のバランスを整えるという意味で、矯正治療が選択肢になることもあります。

「何もしない」という判断にも理由があります

歯科医院を受診すると、

「何か治療を勧められるのではないか」

と不安に感じる方もいるかもしれません。

しかし、診察の結果、

「今は触らない方がよい」
「定期的な確認で十分です」
「次回CTを撮影してから判断しましょう」

とお伝えすることもあります。

歯は一度削ると、元の状態には戻りません。

そのためTHE DENTALでは、レントゲンに少し気になる部分があるという理由だけで、すぐに詰め物を外したり、根の治療をやり直したりするのではなく、現在の症状、過去の経過、治療によるメリットとデメリットを踏まえて判断します。

もちろん、痛みや腫れが強い場合、影が拡大している場合、虫歯が明らかに進行している場合には、早めの治療が必要です。

一方で、長期間変化がなく、症状もない歯であれば、定期的に確認しながら大切に使っていくこともできます。

「以前治療した歯が時々気になる」
「根の治療をした歯に影があると言われた」
「古い詰め物を全部やり直すべきか迷っている」
「痛くない歯を治療する必要があるのか知りたい」

このような疑問がある方は、一度現在の状態を確認してみてください。

治療が必要なのか、今は経過を確認できるのかを、レントゲンやCT、実際のお口の状態をもとにご説明いたします。

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