2026.10.28 診療コラム

痛い歯が悪いとは限らない?歯の痛みの場所を自分で判断するのが難しい理由

皆さまこんにちは!池尻大橋の歯医者「THE DENTAL」歯科助手の伊東です。

「右上の奥歯が痛いです」

「この歯が絶対に虫歯だと思います」

「下の歯が痛いので診てください」

歯科医院では、このように「痛い場所」を教えていただくことがよくあります。

もちろん、患者さんが感じている場所は診断するうえで非常に大切な情報です。

ところが、実際に詳しく検査してみると、

「患者さんが痛いと思っていた歯とは違う歯が原因だった」

ということがあります。

さらに驚かれるかもしれませんが、「上の歯が痛いと思っていたのに、実際には下の歯が原因だった」というケースもあります。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

今回は、知っていると意外と役に立つ「歯の痛みと場所」についてお話しします。

歯の痛みは意外と場所が分かりにくい

例えば、指先を針で刺したとします。

この場合、多くの方は「人差し指のここが痛い」とかなり正確に場所を説明できると思います。

ところが、歯の痛みは少し違います。

「右上の奥が痛い気がする」

「一番奥なのか、その一つ手前なのか分からない」

「上なのか下なのかもよく分からなくなってきた」

ということが珍しくありません。

特に奥歯では、どの歯が原因なのか患者さん自身で正確に判断することが難しい場合があります。

そのため歯科医院では、「患者さんが指さした歯だけ」を診て診断するわけではありません。

周囲の歯も含めて確認していきます。

隣の歯が原因ということもあります

例えば、

「右下の一番奥の歯が痛い」

と思って来院されたとします。

ところが検査してみると、一番奥の歯には特に問題がなく、その一つ手前の歯に深い虫歯が見つかることがあります。

患者さんとしては、

「でも、痛いのは一番奥なんです」

と思われるかもしれません。

もちろん、その感覚を否定するわけではありません。

歯の痛みは、原因となっている場所とは少し離れたところに感じることがあるためです。

これを「関連痛」と呼びます。

つまり、「ここが痛い」と感じている場所と、実際に問題が起きている場所が必ずしも一致しないことがあるのです。

上の歯と下の歯を間違えることも

さらに分かりにくいのが上下の奥歯です。

「絶対に上の歯が痛い」

と思っていても、詳しく調べてみると下の奥歯が原因だった、ということがあります。

反対に、下の歯が痛いと思っていたら上の歯に問題が見つかることもあります。

特に強い痛みが出ている場合には、患者さん自身でも痛みの場所がだんだん分からなくなることがあります。

そのため、

「患者さんが上と言っているから上の歯だけ治療する」

という判断は危険です。

本当にその歯が原因なのかを確認する必要があります。

歯医者ではどうやって原因の歯を探す?

では、歯科医院ではどのように痛みの原因を探しているのでしょうか。

まず重要なのが問診です。

「いつから痛いのか」

「何もしなくても痛いのか」

「冷たいものがしみるのか」

「温かいものが痛いのか」

「噛んだときだけ痛いのか」

「夜になると痛くなるのか」

「痛みはすぐ消えるのか、しばらく続くのか」

こうした情報は非常に重要です。

単純に「痛い・痛くない」だけではなく、「どのようなときに、どのように痛むのか」によって考えられる原因が変わります。

そのうえで、お口の中を確認し、必要に応じてレントゲン撮影などを行います。

歯を軽く叩いて確認することがあります

歯医者で歯を一本ずつ軽く「コンコン」と叩かれた経験はありませんか?

これは単に歯を叩いているわけではありません。

周囲の歯と比べて、特定の歯だけに痛みや違和感が出ないかを確認しています。

例えば、歯の根の先に炎症が起きている場合などには、噛んだときや歯を軽く叩いたときに違和感が出ることがあります。

大切なのは「痛かったかどうか」だけではなく、隣の歯と比べて反応に違いがあるかどうかです。

そのため、複数の歯を順番に確認することがあります。

冷たいものへの反応を確認することも

歯の神経の状態を調べるため、冷たい刺激に対する反応を確認することがあります。

健康な歯でも冷たい刺激を与えれば「冷たい」と感じます。

重要なのは、その反応の仕方です。

刺激をやめるとすぐに症状がなくなるのか。

それとも、刺激をやめた後もしばらく痛みが残るのか。

周囲の歯と比べて極端に反応が強くないか。

逆に、まったく反応がないのか。

こうした違いを確認しながら、歯の神経の状態を判断していきます。

レントゲンだけですべて分かるわけではありません

「レントゲンを撮れば、どの歯が痛いのかすぐ分かるのでは?」

と思われる方もいるかもしれません。

確かにレントゲンは非常に重要な検査です。

目では見えない歯と歯の間の虫歯、根の状態、骨の状態など、多くの情報を確認できます。

しかし、レントゲン写真だけですべての痛みの原因が分かるわけではありません。

症状が出始めたばかりの場合などでは、レントゲン上でははっきりとした変化が確認できないこともあります。

また、レントゲンで虫歯が見つかったとしても、その虫歯が現在感じている痛みの原因とは限りません。

だからこそ、

患者さんのお話。

実際のお口の中の状態。

痛みの出方。

冷たいものへの反応。

噛んだときの反応。

レントゲンなどの画像。

これらを組み合わせて判断する必要があります。

「虫歯がある=その歯が痛みの原因」とも限らない

これは非常に重要です。

例えば、右下に虫歯がある患者さんが「右下が痛い」と来院したとします。

「虫歯もあるし、ここが原因だろう」

と思ってしまいそうですが、必ずしもそうとは限りません。

虫歯自体は以前から存在していて、今回の痛みは隣の歯の根の炎症が原因かもしれません。

あるいは、歯ぎしりによって特定の歯に強い力が加わって痛みが出ている可能性もあります。

「見た目に問題がある歯」と「現在の症状を出している歯」が同じとは限らないのです。

歯が原因ではない「歯の痛み」もあります

さらに難しいのが、歯が痛いのに歯そのものが原因ではないケースです。

代表的なものの一つが上顎洞です。

上顎の奥歯の根は上顎洞と非常に近い位置にあります。

そのため、副鼻腔に炎症が起きていると、上の奥歯が痛いように感じることがあります。

「何本かの上の奥歯がまとめて痛い」

「風邪をひいてから歯が痛くなった」

「鼻の症状と同じタイミングで奥歯に違和感が出た」

といった場合には、歯以外が原因となっている可能性も考えます。

もちろん、反対に歯の感染が上顎洞へ影響することもあるため、必要に応じて詳しく確認します。

「痛いから神経を取る」は慎重に判断する必要があります

歯が強く痛むと、

「もう神経を取ってください」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、神経を取る治療は元に戻すことができません。

だからこそ、本当にその歯が原因なのか、本当に神経の治療が必要な状態なのかをできる限り確認することが重要です。

症状と検査結果が一致しない場合には、その日に大きな治療を行わず、経過を見ることもあります。

患者さんからすると、

「痛いのに今日は治療しないの?」

と不安に感じるかもしれません。

しかし、原因がはっきりしていない状態で歯を削ったり神経を取ったりしてしまうことのほうが問題になる場合があります。

何もしないのではなく、「治療する歯を間違えないために確認している」ということです。

痛みを説明するときは「場所」以外も教えてください

歯医者を受診するとき、

「どこが痛いのか正確に説明できない」

と心配する必要はありません。

実は、

「右側なのは分かるけれど、上か下か分からない」

「この辺り全体が痛い」

という情報も十分役に立ちます。

無理に一本の歯を特定しなくても大丈夫です。

それよりも、

「冷たい水で痛い」

「噛むと痛い」

「夜、寝ていると痛くなる」

「何もしなくてもズキズキする」

「痛くなったり治まったりする」

「温かいものを飲むと痛い」

といった「痛み方」を教えてください。

診断するうえで非常に重要な情報になります。

痛い場所を自分で決めつけなくて大丈夫です

「この歯が絶対に悪いと思います」

と来院される患者さんは少なくありません。

もちろん、ご自身が感じている場所を教えていただくことはとても大切です。

ただ、実際の原因は隣の歯だったり、上下反対側の歯だったり、ときには歯以外だったりすることがあります。

そのため、THE DENTALでは痛みがある場合、患者さんが痛いと感じている歯だけではなく、必要に応じて周囲の歯や噛み合わせなども含めて確認します。

特に神経を取る、歯を大きく削る、抜歯するといった元に戻すことのできない治療では、原因となっている歯をできる限り正確に診断することが重要です。

「痛い場所が自分でもよく分からない」

「上なのか下なのか分からない」

「昨日と今日で痛い場所が違う気がする」

このような状態でも問題ありません。

無理に「この歯です」と決めず、感じている症状をそのまま教えてください。

歯の痛みは、意外と複雑です。

だからこそ、「痛い場所だけを見る」のではなく、「なぜ痛いのか」を調べることが大切です。

歯に違和感がある、噛むと痛い、冷たいものがしみる、どの歯か分からないけれど痛みがある。

そんなときは、症状が強くなるまで我慢せず、お気軽にご相談ください。

Instagram