JOURNAL
歯を削らずに前歯を白く整える。0.04mmの超薄型ジルコニア「ラブリエ」の症例
皆さまこんにちは。THE DENTAL歯科助手の雛田です。
今回は、当院で行った前歯部の「ラブリエ」の症例をご紹介します。
「前歯の色が気になる」「昔詰めたコンポジットレジンの色や形が気になる」「ホワイトニングだけでは思ったような見た目にならない」「できるだけ自分の歯は削りたくない」——こうしたご相談は非常に多くあります。
前歯の見た目を大きく変える方法として、これまではセラミッククラウンやラミネートベニアが代表的でした。しかし、どちらも症例によっては健康な歯をある程度削る必要があります。
今回使用した「ラブリエ」は、非常に薄いジルコニアセラミックを歯の表面に接着することで、できる限り歯を削らずに色や形を整える治療方法です。
まず、今回の写真について
今回掲載する治療後の写真では、右上1番の前歯はまだ最終的なセラミックではなく、仮歯の状態です。
この歯は失活歯のため、ラブリエではなく最終的にセラミッククラウンへ置き換える予定です。そのため、今回掲載している写真は非常にきれいに仕上がってはいますが、実はまだ治療途中です。
今後、右上1番の仮歯を最終的なセラミッククラウンへ入れ替えることで、前歯部の色調や形態がさらに揃い、より完成度の高い仕上がりになる予定です。
治療前。前歯には過去のコンポジットレジン修復が複数あり、天然歯との色調や質感の違いが見られます。
前歯に複数の詰め物がある場合の難しさ
今回の患者様は、以前から前歯に複数のコンポジットレジンによる修復があり、歯そのものの色だけでなく、古い詰め物との色の違いや表面の見え方も気にされていました。
ホワイトニングの場合、自分自身の歯を白くすることはできますが、すでに入っているコンポジットレジンなどの人工物は白くなりません。そのため、前歯に複数の詰め物が入っている場合には、ホワイトニングを行うことで逆に天然歯と詰め物との色の差が目立つこともあります。
そこで今回は、右上2・3、左上1・2・3の計5本をまずラブリエで修復しました。右上1については失活歯であり、現在は仮歯です。今後ここを最終的なセラミッククラウンへ置き換え、前歯6本の色調と形態を整えていく計画です。
今回の大きなポイントは「歯を削っていない」こと
一般的なラミネートベニアでは、セラミックを装着するスペースを確保するため、歯の表面のエナメル質を薄く削ることがあります。もちろん削る量はクラウンと比較すれば少ないのですが、一度削った天然歯を元に戻すことはできません。
そのため当院では、審美治療を考える際にも「どこまで天然歯を残せるか」を非常に重要視しています。
今回使用したラブリエは、3Dデータを利用しながら極めて薄いジルコニアを製作することができ、今回の症例では約0.04mmという非常に薄い設計で製作しています。
0.04mmと聞いてもイメージしにくいと思いますが、本当にフィルムのような薄さです。
従来のセラミック修復では、ここまで薄くすると製作途中や装着前に破折するリスクが高く、一定の厚みを確保する必要がありました。その厚みを作るために歯を削る必要があったわけです。
ラブリエでは、製作方法そのものが従来のラミネートベニアとは異なります。非常に薄いジルコニアを製作できるようになったことで、「セラミックを入れるスペースを作るために歯を削る」という従来の考え方を、症例によっては大きく変えられるようになりました。
今回も、天然歯を削ってスペースを作るのではなく、もともとの歯の表面を利用して超薄型のジルコニアを接着しています。
なお、接着前の歯面処理では、エッチングなどによって歯が一時的に白っぽく見えることがあります。一方、過去のコンポジットレジン修復材が残っている部分では見え方が異なることもあります。こうした歯面の状態も確認しながら、接着前のクリーニングや必要な処理を行います。
セット前の調整が不要だったほどの高い適合精度
そして今回、治療を行う側として特に驚いたのが、適合精度の高さでした。
セラミック治療では、完成した補綴物を実際の歯に合わせた際、接触部分や歯肉との境目を微調整することがあります。しかし今回のラブリエでは、セット前の調整がほとんど必要ありませんでした。
歯に軽く引っ掛けるように合わせるだけで非常に高い適合を示し、特に歯肉との接合部もきれいに馴染んでいました。
今回に関しては、形を削って合わせ直すようなセット前の調整は全く行わず、そのまま接着操作に移ることができました。
0.04mmという非常に薄い補綴物でありながら、歯の表面や歯肉付近の形態まで精密に再現されている点は、ラブリエの大きな特徴の一つだと感じています。
約1か月かけて技工士が製作
もちろん、ここまでの適合を得るためには製作側の工程も非常に重要です。
ラブリエは型取りをして数日で完成するようなものではありません。今回も技工士がデータを確認しながら形態、厚み、噛み合わせ、歯肉との境界、隣接歯との関係などを細かく調整し、およそ1か月をかけて一つひとつ作り上げています。
患者様からすると、通常のセラミック治療より完成まで少し時間がかかるという点はデメリットになるかもしれません。
しかし、その分、一つひとつの歯を非常に細かく設計できるため、完成したものを実際に合わせた際の適合性や仕上がりは非常に高いものになります。
今回の症例でも、セット時の調整が不要だったことに加え、色、形態、歯肉との境界の自然さまで含めて、治療を行うドクター側としての満足度は非常に高いものでした。
そして何より、治療後に患者様にも非常に喜んでいただけました。納期は少し長くなりますが、それだけの時間をかけて技工士が丁寧に作り込むからこそ、ドクター側と患者様側の双方にとって満足度の高い仕上がりにつながるのだと感じています。
0.04mmでも、想像以上に下の歯の色が透けにくかった
さらに驚いたのが、この薄さでも下の歯の色をかなりコントロールできたことです。
0.04mmという薄さですので、治療前には私自身も「かなり下の歯の色が透けるのではないか」と考えていました。
実際には、天然歯の色をわずかに反映しながらも、ジルコニアセラミック自体の色調がしっかりと表面に現れ、想像していた以上にきれいな仕上がりとなりました。
今回選択した色はA2
今回選択した色は「A2」です。
A2というと一般的なシェードの中では極端に白い色ではありません。しかし、もともとの歯の状態や周囲とのコントラストによっては十分に白く見えます。
患者様と仮合わせを行った際には、最初は「少し白いかな?」という印象もありました。しかし、実際に口元全体で確認していくと徐々に馴染み、最終的には患者様にも非常に満足していただけました。
審美治療では、「白ければ白いほど良い」というわけではありません。あまりにも白くすると、天然歯というより人工物のような印象が強くなることがあります。一方、せっかく治療をするのであれば「治療前とほとんど変わらない」というのも患者様にとって満足度が低くなってしまいます。
そのため、肌の色、唇の色、残っている天然歯の色、年齢、患者様が求める白さなどを確認しながら、一緒に色を選択していくことが大切です。
ラブリエ装着後。右上1番はこの時点ではまだ仮歯です。今後、最終的なセラミッククラウンへ置き換えることで前歯部の完成度をさらに高めていきます。
薄いからこそ、接着操作は慎重に
ラブリエは単純に薄いセラミックを貼れば終わり、という治療ではありません。むしろ非常に薄いからこそ、接着操作にはかなり神経を使います。
今回も装着前には歯の表面を徹底的にクリーニングし、エッチングなどの表面処理を行ったうえで接着処理を行っています。
ラブリエ側も、口腔内で試適した後そのまま接着するわけではありません。ジルコニア専用のクリーナーで内面を洗浄し、必要な表面処理を行ったうえで、プライマー、ボンディング材、レジンセメントを使用して接着していきます。
今回使用した接着システムはBISCO社製品を中心に組み合わせています。
超薄型のセラミックは装着前の状態では非常に繊細です。強い力を加えれば破折する可能性があるため、位置を確認しながら慎重に圧接し、余分なセメントを除去し、光照射を行います。
その後フロスが問題なく通るか、歯肉付近に余分なセメントが残っていないかを確認し、最後に噛み合わせを細かく調整します。
見た目だけではなく「噛み合わせ」も考えて設計
特に重要なのが噛み合わせです。今回もすべての歯を同じ形で覆っているわけではありません。
例えば犬歯付近では、歯ぎしりや横方向に顎を動かした際に下の歯が接触する部分があります。そのような場所まで無理にセラミックで覆うと、強い力が加わって破折や脱離の原因になる可能性があります。
そこで、事前の設計段階で噛み合わせを確認し、必要な場所はあえて天然歯を残し、負担の少ない部分では先端まで覆う設計としています。
写真を真正面からよく見ると、一部にわずかに天然歯が見える部分があります。ただ、通常の会話距離ではほとんど気になりません。むしろ無理にすべてをセラミックで覆うよりも、噛み合わせを考慮した設計のほうが長期的にはメリットが大きいと考えています。
裏側から確認した状態。噛み合わせや下の歯との接触を考慮し、必要な部分は天然歯を残しながら設計しています。
ラブリエの前に必要な処置があることも
ラブリエを希望されるすべての方が、その日に型取りをしてすぐ装着できるわけではありません。
治療前には歯の表面の状態を整える必要があります。古いコンポジットレジンが入っている場合には、状態によって研磨や再治療が必要になることがあります。また歯石やプラークが付着した状態では精密な接着ができないため、事前のクリーニングも重要です。
さらに、天然歯の色がかなり濃い場合や、より明るい仕上がりを希望される場合には、先にホワイトニングをご提案することもあります。
「ホワイトニング」「コンポジットレジン」「ダイレクトボンディング」「矯正治療」「ラブリエ」「ラミネートベニア」「セラミッククラウン」の中から、その方の歯の状態と希望に合わせて治療方法を選択することが大切です。
ラブリエが向いている可能性がある方
ラブリエがすべての患者様にとってベストな治療というわけではありません。
歯並びのズレが大きい場合には、無理にセラミックだけで形を変えるよりも矯正治療を行ったほうが良いこともあります。強い歯ぎしりや食いしばりがある方、噛み合わせによって強い力が集中する方などでは、適応を慎重に判断する必要があります。
一方で、「歯をできるだけ削りたくない」「ホワイトニングより大きく色を変えたい」「前歯に古い詰め物がたくさんある」「形も少し整えたい」「矯正後、最後に前歯をきれいに仕上げたい」という方にとって、非常に魅力的な選択肢になる可能性があります。
笑った時のスマイルラインまで考える
最後に、今回は笑った状態の写真も掲載します。
正面から歯だけを見た写真と、実際に笑った時の印象は少し異なります。審美治療では、1本1本の歯がきれいかどうかだけではなく、笑った時にどの範囲まで歯が見えるのか、左右のバランスがどう見えるのか、そして唇のラインに対して歯の先端がどのように並んでいるかという「スマイルライン」まで考えることが重要です。
今回の症例では、現時点でも前歯部の印象は大きく改善しています。
ただし、笑った際には右上4番と左上4番付近まで見えるため、この2本についても今後治療を予定しています。
さらに右上1番の仮歯を最終的なセラミッククラウンへ置き換え、左右の4番まで整えることで、笑った時に見える範囲の歯の色や形態がより統一されます。
そこまで治療が進めば、口元全体で見た時にも、多くの方が「きれいな笑顔だな」「スマイルラインがきれいだな」と感じるような仕上がりになると考えています。
笑った時の口元。現時点でも前歯部の印象は大きく改善しています。今後は右上4番・左上4番も治療予定で、笑った時に見える範囲まで色調と形態を整え、より自然で美しいスマイルラインを目指します。
単に前歯を白くするのではなく、笑った時の口元全体まで考えて治療を組み立てていくこと。これもTHE DENTALが審美治療で大切にしていることの一つです。
治療直後のきれいさだけではなく、長期的な経過も確認します
私たちが本当に確認していかなければならないのは「装着したその日のきれいさ」だけではありません。
セラミックそのものだけでなく、接着部分が長期間安定しているか、歯肉の状態に問題がないか、噛み合わせによる負担が出ていないかなどを定期的に確認していくことが重要です。
どんな審美治療でも、治療したら終わりではありません。定期的なクリーニングとメンテナンスを行いながら、できるだけ長く良い状態を維持していくことが大切です。
まとめ
今回の症例では、0.04mmという非常に薄いジルコニア「ラブリエ」を用いることで、天然歯を削らずに前歯の色と形を大きく改善することができました。
さらに、セット前の調整が不要だったほどの適合精度、約1か月かけて技工士が作り込む精密さ、そして患者様・ドクター双方の高い満足度も印象的でした。
THE DENTALでは、「とにかく白くする」「とにかくセラミックにする」のではなく、できるだけ天然歯を残しながら、その方にとって自然で美しい口元をつくることを大切にしています。
前歯の色や形、古い詰め物、ホワイトニングでは改善しにくい見た目などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
まず現在の歯の状態と噛み合わせを確認し、ラブリエが適しているのか、それともホワイトニング、ダイレクトボンディング、矯正治療など別の方法が適しているのかを含めてご提案いたします。











